営業活動のオンライン化が進む中、多くの企業が属人的な組織体制からの脱却を模索しています。
また、営業部門において「テレアポだけでは成果が出ない」「リード数は増えたのに商談化しない」といった課題を抱える企業も少なくありません。
そこで、顧客との関係性を強化し、誰もが成果を出せる組織体制を構築するために導入されているのがインサイドセールスです。
本記事では、インサイドセールスをゼロから立ち上げたい企業様向けに、設計方法から運用、改善までの実践ガイドを提供します。
こんな方におすすめ
✓ インサイドセールスの導入や立ち上げ方法を知りたい方
✓ 体制設計・KPI設定・初期運用など具体的なノウハウを求めている方
✓ 他社事例や実践テンプレートを活用して、社内提案に役立てたい方
インサイドセールスとは

インサイドセールスとは、電話・メール・Web会議ツールを用いて、見込み顧客の育成や商談機会の創出を担う営業手法です。
主な目的は、「すぐには契約に至らないが将来的に成約の可能性があるリード」を見極め、関係を深めながら商談化へ結びつけることにあります。具体的な役割は以下の3つです。
・リードナーチャリング(見込み顧客の育成)
顧客の課題や関心に応じて情報提供を行い、購買意欲を高めていく活動。定期的なメール配信や架電フォロー、オンライン商談などで信頼関係を構築する。
・リードクオリフィケーション(見込み顧客の精査)
顧客の温度感や予算、導入時期などをヒアリングし、商談化の可能性を判定。スコアリングやCRMを活用して優先度を可視化する。
・アポイント獲得、商談機会の創出
検討意欲が高まった顧客を営業部門(フィールドセールス・商談チーム)へと引き継ぐ。適切なタイミングで打診し、受注率の向上を目指す。
インサイドセールスは、マーケティング部門と営業部門の橋渡し役として、企業の営業プロセスを効率化する中核的な存在です。
導入効果・メリット
インサイドセールスを導入するメリットは、大きく分けて4つあります。
①営業活動の効率化
訪問に伴う移動時間が削減でき、1日に対応できる顧客数を増やすことが可能。少人数でも高い生産性を発揮できる体制を構築できる。
②リード育成の質の向上
見込み顧客と定期的に接点を持つことで、顧客の関心度や課題を継続的に把握。その結果、商談化のタイミングを逃さず、成約につながりやすい顧客を見極めることが可能になる。
③コスト削減
出張費や交通費などの経費削減や、人的・時間的なリソースを戦略的に配分できる。
④地理的な制約を超えた営業展開
リモート環境でのアプローチが前提となるため、地域に縛られず全国・海外の顧客にも対応可能。新たな市場やターゲット層への接触機会を拡大できる。
このような4つの観点から、現代のBtoB営業において欠かせない部門として注目を集めています。
関連記事:インサイドセールスの将来性は?成長性・キャリア・年収まで徹底解説!
インサイドセールス立ち上げの全体ロードマップ

この章では、インサイドセールスを立ち上げるために、どの順番で何を実行していくのかを7つのステップで解説します。
ステップ0:事前準備・インプット
まずは、立ち上げの目的と課題を社内で共有し、現状を把握する段階です。組織内において、認識の違いによるトラブルや後工程のずれを防ぐため、丁寧に進めます。
やること
・経営層と目的、方向性の共有
例:営業リソースが不足し新規開拓が滞っているため、プロセスを効率化したい
・現状の営業課題、営業フローを整理
例:リードは取れているが商談化率が低い
・他社の成功事例やベンチマーク企業を調査
例:同業他社がインサイドセールスで商談数2倍を達成している
・想定リスクの洗い出し
例:部門間の連携不足、CRM入力工数の増大
ポイント
立ち上げは、営業手法の追加ではなく、営業プロセス全体の再設計です。事前準備では、経営層やマーケティング部門を巻き込み、目的を明確にします。
ステップ1:戦略とKPI設計
次に、目指す成果を数値で定義します。ここでは、営業活動が「量重視」「立ち上げたまま放置」にならないように目標を可視化することが大切です。
やること
・売上、商談数、ROIなどの目標設定
例:架電数40件、商談数20件
・KPIモデル設計
例:架電数500件→有効会話率30%→商談化率10%→受注率5%
・CAC(顧客獲得コスト)、LTV(顧客生涯価値)などの分析指標設定
例:商談1件あたりのコストを算出し、目標値を5万円以内に設定
・量と質のバランスを意識したKPI目標の設定
例:架電数40件/日、商談数15件/月
ポイント
KPIは、活動指標(架電数)と成果指標(商談化率)の両軸で設計します。はじめは、仮設ベースでも良いので、運用しながら修正しましょう。
ステップ2:体制設計・人材配置
目標を決めた後は、人材の配置と役割分担です。自社の営業フローに沿って業務を振り分けていきます。
やること
・役割分担の定義
例:SDR(反響型営業)、BDR(新規開拓型営業)
・兼務型or専任型の判断
例:稼働人材の選定(営業マネージャー、プレイングリーダー、プレイヤー)
・必要人数の見積もり
例:目標商談数から逆算して抽出
・採用基準、スキル用件の整理
例:採用基準の設計(コミュニケーション力、CRM運用スキル)
ポイント
立ち上げ初期は、「少人数+兼務型」でも構いません。成果が安定してきた段階で専任化を検討します。
ステップ3:ツール選定・環境構築
続いて、業務を効率的に行うために必要なツールを選定します。営業活動の課題発見や改善には、データを一元管理できるCRMやSFA、MAツールが不可欠です。
やること
・CRM/SFA/MAの導入検討
例:トラッキング、分析、レポート機能の用件定義
・顧客データの整備
例:CSVインポート、重複排除、属性・業種別の振り分け
・セキュリティ、権限管理の設計
例:権限付与、パスワード設定
ポイント
ツールは導入よりも運用設計が重要です。「何を誰が記録し、どのデータを分析するか」を明確にしてから選定しましょう。
ステップ4:スクリプト作成・運用設計
次に、営業活動を実行に移すための準備です。顧客とのトーク内容を記載したスクリプトを作成し、チーム全体のスキルを均一化します。
やること
・顧客の関心度に合わせて複数パターンのトークスクリプトを作成
例:初回アプローチ、資料送付、フォローコール、契約書送付
・BANTC情報のヒアリング項目を整理
例:予算、決裁者、課題、導入時期
・FAQリストや切り返しトーク集の整備
例:想定される質問や断り(今は必要ない・営業は断っている)に対する切り返しトークの作成
・ロールプレイング、フィードバック体制の構築
例:評価基準の設定
ポイント
トークスクリプトは、何を話すかよりもどう聞くかが大切です。顧客理解を深める質問設計が成果を左右します。
ステップ5:パイロット運用(試験導入)
ツール・スクリプト・体制が整った後は、2~3人の小規模で試験運用を行います。初期段階の検証で運用体制を確立することで、規模拡大時のリスク(成果不良や連携不足など)を最小限に抑えることが可能です。
やること
・一部のリードを対象に仮運用
例:新規リスト200件、1ヶ月間のトライアル
・架電結果や有効会話率を分析
例:アポ率、断り率、担当者接続率などの稼働データを分析
・KPI比較と仮説検証
例:課題要因の追究、改善施策の立案
・改善施策の実行と検証
例:「担当者の在籍時間の確認を徹底したことで、接続率が〇%向上した」
ポイント
導入初期は、失敗から学ぶことを前提に運用をスタートさせます。定量・定性の両面から改善を行いましょう。
ステップ6:本運用拡張・改善
検証を経て、効果が確認できたら本格的な運用へ移行します。
やること
・KPIモニタリング体制とダッシュボードの整理
例:日次商談化率、対応ステータス別の件数を可視化
・PDCA体制の確立
例:週次1on1、月次の改善会議
・成果拡大フェーズに合わせた人員追加や外注検討
例:社内→ナーチャリング対応/外注→新規架電担当で分業
・業務のマニュアル化、ナレッジ共有の促進
例:社内マニュアル作成、定例会議(朝礼・昼礼・夕礼)の実施
ポイント
数字の改善と仕組みの定着は別物です。成果を可視化し、チーム全体で成長を実感できる環境をつくります。
ステップ7:差別化戦略の導入
最後に、運用が安定した段階でテクノロジーやAI技術を導入し、営業活動の質を高めます。業務の「効率化」と「差別化」を両立させ、成果を持続的に伸ばす段階です。
やること
・インテクトデータ連携
例:顧客のWebデータをもとに優先リードを抽出
・AIトーク分析
例:成功通話を解析し、成果トークの傾向を共有
・スコアリングの強化
例:顧客ステータスをリアルタイムで表示
・パーソナライズアプローチ
例:属性や興味・関心に応じたトークスクリプトを作成
ポイント
このフェーズでは、人が手動で行っていた業務を自動化し、蓄積したデータから成果へと導く仕組みをつくります。属人的な営業から脱却し、チーム全体で成功パターンを再現できる状態を目指します。
成功に導くために知るべき設計上の注意点

ここでは、インサイドセールスの立ち上げ時によくある失敗とその回避策を具体例とともに紹介します。
役割と目的の曖昧さ
よくある失敗パターン
・営業担当者の目的が「架電数をこなすこと」になってしまう
・電話をかける=仕事という概念が根付く
・フィールドセールスへの引き継ぎ基準が曖昧でアポイントの質が低下する
対策
・インサイドセールスの役割を明文化し、目的を共有する(見込み顧客の育成・リスト精査・市場リサーチ・商談創出)
具体例
・1日〇件架電だけではなく、「商談化率〇%」をKPIに設定し、架電量と質を両立させる
・リードステータスを「興味あり/検討中/失注」など段階的に分類し、どのフェーズでフィールドセールスに引き渡すかを定義する
KPI設計の偏り
よくある失敗パターン
・量をこなす意識が強く、チームの疲弊や離職に繫がる
・架電数、通話数など稼働量に対するKPIだけを追うと反応率が下がり、成果が頭打ちになる
対策
・アプローチの質に対するKPIも併用し、バランス良く設計する(会話率・商談化率・資料送付率)
・KPIは固定せず、月次で見直すサイクルをつくる
具体例
・初期は「架電数・商談数」を重視し、安定期には「商談化率・成約率」にKPIを移行する
・1ヶ月目は架電数500件/商談数10件→3ヶ月目には商談化率10%/受注率5%を目標に設定する
ツール選定・データ精度の問題
よくある失敗パターン
・目的が明確でないまま、CRMやMAを導入し「入力されない」「活用されない」状態になる
・顧客データの重複、誤登録、属性の入力もれにより分析結果が不正確になる
対策
・ツールを導入する前に「使う目的」と「誰が何を入力するか」を定義する
・外部データ連携や自動補完機能を活用し、リストの精度を保つ
具体例
・「アプローチ直後に必須項目を入力する」「入力方法をマニュアル化する」などCRM登録のルールを設ける
・重複リードはMAで自動検知し、担当者に通知する
組織の抵抗・関係摩擦
よくある失敗パターン
・導入背景の説明不足で、営業現場が納得しないまま始動してしまう
・トップダウンで進めた結果、現場が形だけの体制になり混乱する
対策
・導入初期からミドル層(リーダー・マネージャー)を巻き込み、意見交換を行う
・経緯や目的を明確に伝え、共通の成果指標を持つ
具体例
・インサイドセールスを導入する前に営業マネージャー向け説明会を開催し、方向性を共有する
・導入後に想定される成果をデータや事例で示す
初期成果への不安
よくある失敗パターン
・立ち上げ初期に成果が出ず、経営層から撤退判断される
・モチベーションが下がり、優秀な人材が離脱する
対策
・初期は「短期成果」ではなく検証フェーズと位置付け、小さな成功体験を積ませる
・成功事例を社内共有し、成果を発信することで部門の定着を促進させる
具体例
・立ち上げから3ヶ月間は「商談化1件」でも全社共有し、賞賛風土をつくる
・「初回トークで課題のヒアリングができた」「資料送付が取れた」など、プロセスにおける成果も評価する
・KPIは「資料送付率」「有効会話率」など段階的に設計する
実践テンプレート・設計パターン
インサイドセールスを運用する際は、「KPI設計」「人材構成」「トークスクリプト」「ツール導入」の4つの要素が重要です。以下に、作成時のポイントを図解で解説します。
KPI設計テンプレート例

KPI設計の基本は、最終目標から逆算することです。まずは、売上や受注件数を設定し、達成するために必要な商談数や架電数を算出します。初期フェーズでは、「アポイント獲得数」や「商談化数」をKPIに設定するのが一般的です。
| KPI項目 | 目安・平均値 |
|---|---|
| 架電数 | 30~50件/1日 |
| 担当者接続率 | 20% |
| アポイント率 | 2~5% |
| 受注率 | 10~30% |
人員構成パターン

インサイドセールス部門の人員構成は、企業規模や営業プロセスの成熟度によって異なります。ここでは、2つの代表的な体制を紹介します。
■分業型
特徴:営業マネージャー(SV)+SDR(商談創出)/BDR(新規開拓)
適用条件:リード数が多く、一定規模の人員を配置できる場合
メリット:専門性が高まり、成果が安定しやすい
デメリット:人員リソースや円滑な連携体制が求められる
【例】
営業マネージャー(SV)→KPI管理・人材育成
プレイヤー(SDR)→マーケティング部門で獲得したリードへのフォロー
プレイヤー(BDR)→休眠顧客・新規リストへのアプローチ
■兼務型
特徴:プレイングリーダー+SDR/BDR
適用条件:スタートアップや立ち上げ初期フェーズなど少人数で稼働する場合
メリット:柔軟に運用でき、フローが定着しやすい
デメリット:KPI設定が不十分だとプレイングリーダーに負荷がかかりやすい
【例】
プレイングリーダー→KPI管理・人材育成・SDR/BDR
プレイヤー→SDR/BDR
トークスクリプト構成例

トークスクリプトは、対話の流れまとめた台本です。顧客との関係性に応じて、トーク構成を使い分けます。
初回構成例
挨拶:「お世話になっております。〇〇社の△△と申します。」
問題提起:「最近、営業活動の体制構築に課題を感じている企業様が増えているのですが、御社ではいかがでしょうか?」
関心確認:「事例を交えてご紹介のお時間をいただけないでしょうか?」
フォロー構成例
前回の振り返り:「以前は検討初期とのことでしたが、その後ご状況はいかがでしょうか?」
情報提供:「同業種の企業様では導入後〇〇といった成果が出ています。」
アクション促進:「ぜひ、送付した資料と合わせて詳しくご説明させてください」
【トークスクリプトのテンプレートはこちら】

切り返しトーク例
| 断り理由 | 切り返しトーク例 |
|---|---|
| 価格が高い | 「導入規模に応じて段階的なプランもございます。」 |
| 今は必要ない | 「今すぐのお話しではなく、今後の情報収集としてご紹介させていただければと思います。」 |
| 他社検討中 | 「比較検討の判断材料として、ご紹介の機会をいただけないでしょうか。」 |
【切り返しトークのフォーマットはこちら】

ツール導入チェックリスト
ツールは、運用目的とデータをどのように営業活動で活用するかを明確にして、選ぶことが大切です。以下は、導入前に確認すべき代表的な項目です。
| チェック項目 | 確認内容 |
|---|---|
| CRM連携性 | 既存システム(Salesforce、HubSpotなど)との連携は可能か |
| 操作性 | 営業担当者が直感的に使える仕様になっているか |
| レポート・可視化 | KPI(架電数・商談化率など)をリアルタイムで可視化できるか |
| データ入力補助 | 自動入力や名刺スキャン、外部DB連携で手入力を削減できるか |
| 通話ログ管理 | 通話内容を自動記録、文字起こしできるか |
| セキュリティ | 顧客情報保護体制やアクセス権限の管理は可能か |
インサイドセールス代行会社を活用した導入事例
インサイドセールスの立ち上げ手順を解説してきましたが、人的リソースやノウハウ不足に悩む企業も少なくありません。
立ち上げ初期は、体制づくりやデータ管理、トークスクリプトの作成などやるべきことが多く、「何から始めて良いかわからない」という状態に陥りやすいです。
そのなかで増えているのが、インサイドセールス代行会社を利用して立ち上げを支援してもらうケースです。ここでは、実際に代行会社を活用してインサイドセールスを導入した企業の成功事例を紹介します。
導入事例①ヘルスケア・アプリブランドの新規商談創出
背景
ヘルスケア分野でアプリサービスを展開する大手ブランド企業では、新サービスのリリースに伴い、商談機会の拡大に向けてインサイドセールス支援を導入。
課題
・営業代行導入による稼働状況のブラックボックス化
・マーケティングデータの取得
支援内容
・プロジェクト専用のCRMを導入し、リアルタイムで進捗を可視化
・ニーズ調査や顧客の反応に対するヒアリング設計
・顧客の関心、断り理由などのデータをレポーティングで提供
成果
・3週間で110件の商談を獲得
・アポイント取得率22%を記録
関連記事:【顧客事例③】大手ヘルスケアブランド企業様 ヘルスケア・アプリサービスの導入企業を新規開拓
導入事例②自治体向けDXサービスの商談獲得
背景
自治体向けに新サービスをリリースした企業では、事業拡大期に入り、新規商談をプッシュ型営業で増やしたいという目的でインサイドセールス支援を導入。
課題
・新サービスに対する自治体側のニーズや予算感が不透明
・ヒアリングを伴う商談獲得
支援内容
・ターゲット自治体に対して、ニーズ・他社利用の有無・予算などのヒアリング設計
・商談獲得だけでなく、ヒアリングした内容をデータ化→今後の提案設計に活用できる形で提供
成果
・5日間の短期プロジェクトで商談獲得率3.7%を記録
関連記事:【顧客事例④】自治体向けDXサービスの導入提案の商談獲得
【インサイドセールスの外注を検討している方はこちら】

まとめ|属人化しない営業体制をつくるために
インサイドセールスの立ち上げを成功させるには、マーケティング・営業部門との連携を前提に、商談創出から受注までのプロセスを可視化する必要があります。
立ち上げ初期は、小さい規模からスタートして組織改善に取組み、属人化しない営業体制の基盤をつくることが重要です。
継続的に運用できる営業体制を自社に根づかせ、顧客データをもとにニーズに適した提案で、成果を生み出す組織を構築していきましょう。
弊社では、インサイドセールスの立ち上げに欠かせないターゲットリードのスコアリングやスクリプト設計、CRMの運用ルールの策定・実行まで一貫した支援を行っています。
インサイドセールスの導入を検討している方は、お気軽にご相談ください。

IS factory magazine(アイエス ファクトリーマガジン)編集部です。2022年開設。
定期的にインサイドセールスや営業に関するノウハウ、セミナー情報を発信しています。
