クロージングとは、商談の最終段階であり顧客に契約を後押しする重要なプロセスです。営業活動では、成果に直結する局面であることから対策の強化が求められています。
そこで本記事では、クロージングの基礎知識や成功に導くコツを解説していきたいと思います。
実践に活かせる事例も紹介しているので、商談の成約率を高める対策に役立てていただければ幸いです。
こんな方におすすめ
✓ クロージングのコツやテクニックを習得したい営業担当者
✓ 商談の成約率を向上させる取り組みを模索している管理者
✓ クロージングの質を高めて長期の契約に繋げたい方
クロージングとは

クロージング(Closing)とは、直訳すると「終わり」や「締めくくり」を意味するビジネス用語です。営業活動では、商談で顧客に契約の意思決定を促す最終フェーズを指します。
クロージングの目的は、顧客の購買意欲を引き出し契約書の締結や成約、サービスの導入、商品の購入といった具体的な成果に結びつけることです。
このプロセスを成功させるためには、これまでのアプローチで収集した顧客ニーズを整理し、課題に適した提案で決断を後押しする必要があります。
クロージングの重要性
クロージングは、売上や利益に直結する重要なプロセスです。検討段階において、顧客がサービスの導入に前向きな意向を示していたとしても、契約に至らなければ成果には繫がりません。
例えば、顧客が自社サービスの必要性を感じられず競合の利用を決断するケースや検討期間中に興味が薄れてしまうケースがあります。
そのため、クロージングは単に契約の合意を得るだけでなく顧客の課題を解消する提案を最適なタイミングで行う技術が求められるのです。
クロージングの役割

具体的なクロージングの役割は3つあります。商談では、以下の目的を念頭にヒアリング内容を整理することでサービスの魅力が伝わりやすくなります。
意思決定をサポートする
成約を促す意思決定のサポートは、クロージングの大きな役割です。多くの顧客は、提案に興味を持っていても不安や迷いから決断を躊躇します。
しかし、契約を取ることに意識が向いてしまうとただメリットを並べるだけの一方的なセールストークになりがちです。そのため、顧客の課題解決に向けて最善の選択ができるよう支援するプロセスであると理解しておくことが大切です。
顧客の不安や疑問を払拭する
クロージングは、サービスに対する不安や疑問を解消する重要なステップです。商談では、顧客ニーズに応じた活用方法や懸念点を払拭する対策を提示する必要があります。
これにより、顧客に安心感を与え納得して決断できる環境を作り出すことができます。的確な提案をするためには、相手の思考に合わせて伝え方を変える柔軟性が不可欠です。
サービスの適合性を確認する
クロージングは、顧客の期待値と自社のサービスが適合しているかを確認する場でもあります。このプロセスでサービスの認識を擦り合わせることにより、成約の満足度を高めていきます。
適合性を示すには、顧客の課題やニーズを改めて明確にし、提供するサービスがどう適しているのかを伝える言語力が欠かせません。
期待値が高い場合は、サービスの利便性とデメリットの両方を伝えることで、現実的な範囲に調整する必要があります。
クロージングの流れ

クロージングには、基本となる流れがあります。各プロセスの意図を理解することは、進行をする上で非常に重要です。
ここでは、テストクロージング、クロージング、契約締結の3つの流れを例文付きでご紹介していきます。
テストクロージング
テストクロージングは、顧客の意向やサービスに対する評価を探る手法です。関心度が低い状態で意思決定を促すのは、失注の要因になります。
この段階では、相手の意欲を図れるような質問を投げかけ、真意を見極めていきましょう。
【テストクロージングの例文】
・これまでの提案内容で、疑問点やご不安な点はありますか?
・御社で活用いただけそうなシステムはありましたでしょうか?
・サービスの導入にあたり一番重視されているポイントは何ですか?
ここで前向きな反応が見られた場合は提案を継続し、不安がある場合は解消してから次の段階に進みます。
クロージング
テストクロージングで顧客がサービスに関心を示していることが確認できたら、クロージングに移ります。
クロージングは、顧客に契約や導入の決断を促すプロセスです。ここでは、契約の有無を明確にする直接的な問いかけを行います。
【クロージングの例文】
・お役に立てるサービスだと存じますが、ご意向いかがでしょうか?
・A、Bどちらのプランがよろしいでしょうか?
・ご契約はいつ頃をご希望でしょうか?
このフェーズでは、ヒアリング情報を基に必要性を要約して伝えることが重要です。また、曖昧な回答で選択が先延ばしになるのを防ぐため、核心に迫る質問を心がけましょう。
契約締結
クロージングの最終ステップは、契約締結です。成約の合意を得られた後は、期間や価格、プランに認識の相違がないよう提案条件を確認します。
顧客からの疑問点は、契約後のトラブルを防ぐためこの場で解決しておきましょう。
【契約締結の例文】
・今回ご提案させていただいた内容は、○○のプランになります。
・ご契約期間は〇ヶ月、月額○円のコースでお間違いないでしょうか。
・お支払い方法は、○○で承っております。
交渉が成立したら、契約書の手続きに入ります。書面の説明では、必要書類や記入方法だけではなく、契約後の流れまで丁寧に伝えることで満足度の向上に繋がります。
クロージングを成功に導くコツ5選

クロージングを成功させるには、顧客との信頼関係を構築するスキルが必要です。ここでは、心理学を用いたテクニックやコツを解説していきます。
①適切なタイミングで提案をする
クロージングで最も重視されているのが決断を促すタイミングです。顧客の関心度が低い状態の提案は、圧迫感を与えます。
しかし、打診までの期間が長すぎると興味をなくしてしまう可能性もあるでしょう。
商談では、顧客がサービスに価値を感じており、契約に前向きな姿勢を示す瞬間を見極めることが大切です。判断するポイントは、相手の質問や仕草、表情にあります。
【顧客が関心を示すサイン】
◆具体的な質問が増える
・このシステムを複数人で管理することは可能ですか?
・この内容を委託した場合、費用はいくらになりますか?
・○○が課題となっているのですが、解消する機能はありますか?
◆導入を見据えた話をする
・システムを構築するまでにどのぐらいの期間がかかりますか?
・弊社の支払いの締め日が○日〆なのですが、対応は可能でしょうか?
・○日に利用を開始したいのですが、間に合いますか?
◆積極的に話を聞く姿勢を見せる
・前のめりで話を聞く
・自社のニーズを話す
・メモをとる
◆競合との比較を尋ねる
・御社の強みは何ですか?
・他社と比較して価格が高いのはなぜですか?
・他社との違いを教えて下さい
関連記事:営業トークの秘訣はラポール?心理学を用いた3つのテクニックで信頼関係を構築!
②選択肢を絞る
顧客が決断に迷っている場合は、プランを絞ることで意思決定を促進します。
クロージングでは、選択肢が多いと「決断疲れ」を起こし、判断が先送りになるケースも少なくありません。プランは最大3つまでに厳選し、顧客の要望や課題に適したものを提案します。
比較する際は、二者択一の法則が有効です。この手法は、2つの選択肢を与えることにより選びやすくなるという心理効果を取り入れたテクニックになります。
【二者択一の法則を活用したトーク例】
・Aプランは短期間のお試し価格となりますが、長期的に活用を検討する場合はBプランがお得になります。どちらをご希望されますか?
・レクチャーの日程は、来月と再来月どちらがご都合よろしいでしょうか?
・御社は、価格帯と機能面ですとどちらを優先させたいですか?
③沈黙を恐れない
提案後に顧客が考え込んで沈黙する時間を、「ゴールデンサイレンス」と言います。商談中は、無言になるのを恐れてむやみに話を続けてしまう営業担当者も多いでしょう。
しかし、この沈黙は顧客が提案内容を整理している時間であり、意向を引き出すために必要な間です。ゴールデンサイレンスを遮ると、思考が遮断され結論が出せなくなる場合もあります。
沈黙を怖がらずに返答を待つことも成約に欠かせないテクニックの一つです。
【ゴールデンサイレンスの事例】
◆NG例
営業担当者「これまでの提案でご質問はありますでしょうか?」
顧客「…沈黙。」
営業担当者「いかがですかね。弊社には、他にもこういったメリットがありまして。」
◆成功例
営業担当者「これまでの提案でご質問はありますでしょうか?」
顧客「…沈黙。」
顧客「提案いただいたプランだと費用がネックでして、他のプランはありますか?」
④イエスバット話法で意見を伝える
イエスバット話法は、相手の意見に共感した後に自身の考えを伝える手法です。これにより、相手の主張を尊重しながら別の視点で提案することができます。
誰でも真っ向から自身の意見を否定されると、良い気分にはなりません。
まずは、顧客の意向や懸念点に同調し、その後に自社サービスの価値を伝えることが大切です。
【イエスバット話法の例文】
顧客「このプランを検討しているのですが、価格が高いですね。」
営業担当者「そうですね、お値段が気になりますよね。(YES)ただ、このプランは○○の機能が搭載しているので長期的に見るとコスト削減に繋がります。(BUT)」
⑤具体的な事例でメリットを伝える
導入後のイメージを連想させるには、事例を交えた提案が効果的です。商談では、顧客ニーズに近い情報を提供することで、「自分にも有益なサービスである」と認識してもらいやすくなります。
事例を伝える際は、共感を引き出すストーリーテリングのテクニックが役立ちます。この話法は、物語を通して顧客の感情に訴えかけることにより、成功体験を印象付ける手法です。以下の3つの構成を意識して話してみましょう。
【ストーリーテリング話法】
①顧客の課題や問題を伝える
例:「以前、御社と同様に○○を課題に感じている企業様からご相談をいただきました。課題により、残業が発生するケースもあったそうです。」
②課題の解決策を提示する
例:「そこで○○の業務を自動化するために弊社のサービスを導入いただくことになりました。」
③成果を共有する
例:「結果的に作業にかかる時間が短縮され、残業がなくなったそうです。担当者様からは家族と過ごす時間が増えたと嬉しいお声もいただいております。」

クロージングでよくある課題と解決策

クロージングは顧客のニーズによって提案内容が変わるため、柔軟な対応力が求められます。商談では、相手の予期せぬ要求に「どう対応したらいいんだろう」と言葉に詰まることもあるでしょう。
ここでは、どんな状況においても円滑に進行ができるように、よくある課題と解決策をお伝えしていきます。
決裁者が別にいる
商談者に「自分では決められない」と言われた場合は、決裁者が別にいたり承諾に上長の確認が必要であったりするケースが想定できます。まずは、決裁権を持つ人物を特定しアポイントを取りましょう。
社内の承認に時間がかかる際は、先延ばしになるのを防ぐため、いつ頃までに返答を得られるかを明確にしておきます。
今すぐの導入を考えていない
意思決定を促したが「今すぐの導入を考えていない」と言われた場合は、無理な提案をせず理由を聞き出しましょう。顧客に課題がなければ、サービスがニーズに適合していない可能性があります。
ただし、課題を認識していない場合は、課題を洗い出し解消策を伝える提案が必要です。
関連記事:アポ取り成功の秘訣!営業で成果を出す切り返しトークと成功事例
追加の要求がある
クロージングでは「支払い方法を変更したい」、「納期を早めたい」など追加の要望を受けるケースがあります。自身で決断できる権限がない場合は、早急に確認し対応策を提示しましょう。
また、商談前に対応可能な範囲を社内で共有しておくことも大切です。

クロージングの成功事例
柔軟な対応力を身につけるためには、事前準備が欠かせません。最後に、弊社インサイドセールス支援が初回商談合意率60%を獲得した際に実施していた取り組みをご紹介します。
クロージングの成功に向けて、対策を強化してみてはいかがでしょうか。
商談ロープレを実施する
チーム内や新人研修にて商談チェックシートを活用したロールプレイングを実施。アイスブレイク~クロージングまでの各プロセスを振り返り、改善点を明確にすることでスキルの標準化に繋がった。
<商談チェックシートのダウンロードはこちら>

切り返しトークをまとめる
顧客ニーズに適した提案を実践するために、商談中によく聞かれる質問事項や懸念点への切り返しをシートにまとめチーム内で共有した。過去の商談データや事例を基にアップデートを図ることにより、的確な回答を準備することができた。
<切り返しトークを集約するシートのダウンロードはこちら>

クロージングを成功させるカギは「事前準備」と「対応力」
クロージングは、商談の最終段階であり契約を締結するプロセスを指します。営業活動では顧客の課題を解決する提案を行い、成約へ導く重要な局面です。
クロージングを成功させるには、心理テクニックを活かした対応力とそれを実現するための事前対策が重要です。商材知識を深めアウトプットすることで、クロージングに必要なスキルが身につき、成約率を高めることができます。
営業スキルの基礎を習得したい方は、業界用語をテスト形式で学べるこちらの理解度チェックシートをご活用ください。

万全な事前対策で対応力を強化し、商談の成功を目指しましょう。最後までお読みいただき、ありがとうございました。


IS factory magazine編集部です。2022年開設。
定期的にインサイドセールスや営業に関するノウハウを発信しています。