KPIマネジメントとは、組織やチームの目標を達成するためにKPIを設定し、その進捗を管理・改善するプロセスです。
しかし、指標を設けたものの「チーム全体の成果に繫がらない」、「部下のモチベーションが低下している」といった課題に直面する企業責任者も多いでしょう。
本記事では、KPIマネジメントの基本や成功のポイント、具体的な運用方法を詳しく解説します。すぐに実践できる営業組織の事例も紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。
こんな方におすすめ
✓ 部下の自主性を引き出す仕組みを構築したい企業責任者
✓ チームメンバーへの適切なフィードバック方法を知りたい管理者
✓ KPIを効果的に管理するための施策を探しているマネジメント層
KPIマネジメントとは

KPIマネジメントとは、「成約数」や「アポイント数」などの具体的なKPIを設定し、目標達成に向けて計画的に管理する手法を指します。
KPIは、組織の最終目標に対する進捗を数値で測定するための指標であり、業務の成果や課題を可視化する重要なツールです。
この指標を定期的に見直し、必要に応じて改善することで、最終目標を達成するまでのプロセスを効率的に最適化できます。
関連記事:インサイドセールスのKPIとは?適切な設定方法と運用の具体例を解説!
KPIマネジメントに欠かせない関連用語
KPIマネジメントを成功させるには、関連する概念や用語を正しく理解することが大切です。以下に、用語の意味とそれぞれの活用方法を解説します。

KGI(最終目標)
KGIとは、組織やチームが最終的に達成すべき目標を数値化した指標です。KPIが中間目標を測定するのに対し、KGIは「ゴールそのもの」を示します。
これにより、組織の方向性を明確にすることが可能です。また、KGIに基づいてKPIが設定されるためマネジメントをする上で不可欠な指標と言えるでしょう。
CSF(成功要因)
CSFは、KGIやKPIを達成するために必要な成功要因を指します。具体的には、「顧客満足度の向上」や「リード獲得数の増加」など目標を実現させる取り組みを言います。
CSFは、計画や戦略を実行する際の優先順位を決める指標です。
KPI(中間目標)
KPIとは、最終目標(KGI)の達成度を測るための中間目標です。例えば、営業部門では「契約数」や「アポイント率」、カスタマーサポート部門では「対応件数」、「対応時間」などがKPIに設定されることがあります。
この指標は、現在の戦略が効果的に機能しているかを定量的に判断する基準値であり、課題の特定や行動方針の改善に役立ちます。

KPIマネジメントの重要性

KPIマネジメントが重視される理由には、企業を取り巻く社会的・経済的な背景の変化が関係しています。具体的には、以下の3つがあります。
デジタル化・データドリブン経営の進展
AIやビックデータの活用が進むデジタル時代では、企業活動における統計の重要性が飛躍的に高まっています。従来の経験や勘に頼った意思決定は、リスクが高く、精度に欠ける場面も増えてきました。
統計を用いて様々な判断を行うデータドリブン経営の実現には、業務で蓄積されるデータを分析し、それに基づいて具体的なアクションを起こす仕組みが不可欠です。
KPIマネジメントは、膨大なデータを整理し、どの指標が目標達成に直結するかを明確化するツールとして機能します。
例: Googleアナリティクスを活用したマーケティグ業界では、Webサイトの「訪問者数」、「滞在時間」を分析。この数値をKPIに定め、顧客行動を基に改善施策を打ち出したケース。
ワークライフバランスと効率性の重視
現代の企業経営では、組織の成長だけではなく、従業員のワークライフバランスにも十分な配慮が求められています。これらの要素を両立させるためには、業務の効率化と継続的な進捗確認が重要です。
KPIの管理は、無理な目標設定や過度なプレッシャーの防止策となり、健全な働き方の維持に貢献します。
例:会議時間や稼働日数に応じて目標を設定し、効率的な作業進行と勤務時間の短縮を両立させたケース。
コロナ禍以降の市場変化への対応
ビジネス環境は、コロナ禍をきっかけに大きく変化しました。近年ではテレワークやオンライン事業の急速な普及によって、顧客のニーズや行動パターンがこれまで以上に多様化しています。
このような状況下で企業が存続し続けるためには、市場の変化をいち早く察知し、自社の戦略を柔軟に見直すことが求められます。
KPIマネジメントは、現状の課題を迅速に特定し、顧客ニーズに適した戦略を調整する重要な手法です。
例:コロナ禍で飲食業界が「店舗販売」から「デリバリー販売」への戦略変更を行い、新たな収益源を確保したケース。
KPIマネジメントの5つの手順

KPIを効果的に運用するには、進捗の可視化や定期的な分析、フィードバックの実行が大切です。これらの施策を組み合わせることで、組織を支える強力なツールになります。
以下に、KPIマネジメントを成功させる5つの手順を解説します。
①KGIを設定し現状とのギャップを明確にする
まずは、組織やプロジェクトの最終目標(KGI)を定めます。KGIは、「売上〇円達成」や「市場シェア〇%獲得」など数値を用いて事業全体の成功を測る指標です。
KGIを明確にすることで、成果基準が統一されKPIの精度を高めることができます。KGIを定めた後は、現状とのギャップを抽出し達成可能な数値であるかを判断します。
この手順では、実績や前年比の統計、ターゲット市場の動向を基に比較すると、自社に適した成果を分析することが可能です。
【KGI設定の具体例】
IT企業
KGI:SaaSツールの年間売上を前年比20%向上(1億円→1.2億円)させる
前年の年間実績:1億円
ギャップ:2000万円
②CSFを特定する
次に、ギャップを埋めるために必要な成功要因(CSF)を洗い出します。特定する際は、自社の課題や特性を踏まえて、KGI達成のために実現できる対策を1つ選びましょう。
また、組織の強み・弱みを把握できる「バリュー・チェーン分析」や業界の状況を加味して戦略を算出する「5フォース分析」のフレームワークも有効です。
CSFが複数ある場合は、予算や効率性を重視すると優先順位が見えてきます。
【CSFの具体例】
・営業組織を強化して新規顧客の獲得数を増やす
・サービスに新機能を搭載して既存顧客のアップセルを促進する
・休眠顧客の掘り起こしを行い、リピート率を高める
③適切なKPIを設定する
CSFに基づき、測定可能で具体的なKPI(中間目標)を設定します。例えば「営業組織を強化して新規顧客の獲得数を増やす」をCSFとする場合、「月間アポイント数50件」、「成約率20%」などがKPIになります。
指標は数値と期間を定め、現実的に達成できる範囲で設定することが大切です。

④KPIの進捗を可視化・管理する
KPIは、進捗を可視化して組織全体で共有・分析することで効果を発揮します。活動内容を把握するには、SFAやMAなどのデジタルツールを導入し、リアルタイムで成果を分析できる体制をつくりましょう。
また、KPIの達成度を解析するために月次レポートや目標管理シートを作成し、従業員が実績を確認できる環境を整えます。
これにより、課題の発見や改善策を早期に講じることができます。
⑤成果を定期的に見直し、改善する
KPIは設定したら終わりではなく、継続的に成果を見直し改善を重ねることが重要です。定期的にKPIの達成状況を振り返り、戦略が適切に進んでいるかを判断します。
特に、市場や事業の情勢は日々変化するため、必要に応じて指標を再調整する必要があります。
こうした見直しをするには、定期的な会議を設けてKPIのフィードバックを実施し、組織でデータを共有しながら改善策を議論することが大切です。
【KPI振り返りの場】
・1on1
・キックオフ
・定例MTG(朝礼・昼礼・夕礼)
・クライアントMTG
・日報
関連記事:【シート公開】効果的な1on1の進め方って‥?メリットや取り組み事例を解説!
KPIマネジメントを成功させるポイントと注意点

KPIマネジメントは、適切な指標の設定と継続的に改善する仕組みをつくることが重要です。以下に、運用を成功させるポイントを解説します。
KPIは3つまでに絞る
KPIは多く設定しすぎると、管理が複雑になり優先すべき目標が分かりにくくなります。そのため、KPIは1つから多くても3つまでに絞るのが理想的です。
指標を厳選することで、チーム全体の方向性が統一され、成果に繫がりやすくなります。
KPI達成に向けたアクションプランを作成する
KPIを達成するには、適切なアクションプランを策定し、チーム全員が実行できる環境を整えることが重要です。まずは、数値化できる目標を設定し、成果基準を明確にします。
これにより、従業員が進捗を客観的に把握できるようになります。指標を定めた後は、定期的なフィードバックを実施し、チームの意識向上やスキルの強化に繋げましょう。
【営業チームのアクションプランの例】
・KPI
月間新規契約数20件
・施策
新規リード獲得を強化し、商談数を増やす
・具体的なアクション
①毎日10件の新規リードにアプローチをする
②既存リードへのフォローアップを徹底する(メール・電話)
③週に1回営業トークのロールプレイングを実施する
モチベーションを高めるフィードバックを行う
KPIのフィードバックは、未達要因ばかりを指摘するとメンバーのモチベーションが低下する恐れがあります。
振り返る際は、ポジティブな要素を強調し、次のアクションを促す伝え方を意識することが重要です。
具体的には「否定ではなくより良くするための視点として伝える」、「改善点は提案とセットで報告する」など前向きな伝え方を心がけます。
【フィードバックの例】
・成長の過程を評価する
「新しいアプローチを試した結果、データの質が向上しましたね。次回もこのチャレンジ精神を活かしていきましょう!」
→失敗ではなく「成長」と捉えさせることで、前向きな姿勢を維持できる
・改善案を伝える
「この施策の成果は出ていますが、さらに成約率を上げるために〇〇を試してみるのはどうでしょう?」
→改善策を提案し前向きに考えられるようにする
KPIマネジメントの事例

KPIを効果的にマネジメントするには、進捗の可視化と成功体験の共有が不可欠です。ここでは、営業組織の運用事例を2つご紹介します。
KPIマネジメント事例①CRMを活用した顧客ニーズの可視化
Inside Sales Outsourcingでは、CRMを導入して、顧客ニーズを可視化し、営業プロセスを最適化する仕組みを構築しています。

アプローチ履歴や顧客の反応は、CRMに記録しリアルタイムで分析することが可能です。これにより、営業担当者がターゲット顧客との過去のやり取りを基に最適な提案ができるようになります。
さらにCRMのダッシュボード機能を活用し、アポイント獲得数や受注数などのKPIを一元管理することが可能に。進捗状況を一覧化することで、各指標の達成率を即時に追跡できます。
また蓄積された営業データの解析により、優先度の高いリードを抽出した効果的なアプローチが実現。その結果、営業活動が効率化され活動量の向上に寄与しています。
Inside Sales OutsourcingのCRMを活用した営業ノウハウをまとめたサービス資料は、こちらから無料でダウンロードいだだけます。KPIの達成率を向上させたい方は、ぜひご活用ください。

KPIマネジメント事例②音声データの分析で再現性の高いトークスクリプトを構築
KPIの達成には、行動量を増やすだけではなく、受注に繫がる質の高い提案力が重要です。
Inside Sales Outsourcingでは、営業活動で集約した音声データをモニタリングし、商談に繫がるトークの共通点を分析しています。
具体的には、商談獲得率の高い営業担当者のトーク音源を抽出し、成功パターンを型化する手法です。
音声データを活用することで、これまで感覚的だった「良いトーク」をデータに基づいて検証し、再現性の高いトークスクリプトへと落とし込むことが可能になりました。
新たな成功体験を取り入れ続けることにより、継続的な成果や質の高いトークに繫がっています。
トークスクリプトのひな形は、こちらからダウンロードが可能です。自社の商材に適したトークの型化にお役立てください。

KPIマネジメントを仕組み化し継続的な成果に繋げよう
KPIマネジメントは、組織の目標を達成するための指標を設定し、効果的に管理するプロセスを指します。運用の成功には、KPIの可視化と適切なフィードバックの仕組みを整えることが重要です。
特に、営業組織ではデータ分析やツールを活用したKPIマネジメントが成果の創出に直結します。自社の状況に合わせた戦略を取り入れ、継続的に改善を行いながら、目標の達成に繋げていきましょう。
今回、ご紹介した事例のようにKPIマネジメントを強化した営業手法を検討されている方は、こちらの導入ガイドをご活用ください。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。


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定期的にインサイドセールスや営業に関するノウハウを発信しています。