「経理や資料作成に追われて、本来の仕事に集中できない…」
そんな悩みを抱える中小企業やスタートアップの経営者・マネージャーにとって、有効な選択肢となるのが「事務代行」です。
近年では、オンラインでの業務サポートやクラウドシステムを活用した事務代行サービスが増え、初期コストを抑えてプロの支援を受けられる環境が整ってきました。
この記事では、事務代行の基本的な仕組み・依頼できる業務範囲・導入のメリット・選び方のコツまでをわかりやすく解説します。
実際に自社で導入支援を行ってきた知見をもとに、失敗しない導入方法まで網羅しているので、ぜひ最後までご覧ください。
【そのほか代行に関する記事はこちら】
【保存版】業務代行とは?メリット・費用・導入手順を徹底解説!
事務代行とは?基本の定義と仕組み

事務代行とは、企業や個人事業主が本来社内で行っている事務作業を、外部の専門業者に委託するサービスを指します。
英語では、「back office outsourcing(バックオフィスアウトソーシング)」と表現されることもあります。
ここでいう「事務作業」とは、売上を直接生まないものの、ビジネスを円滑に進めるために不可欠なバックオフィス業務のことです。たとえば、データ入力・請求書作成・在庫管理・スケジュール調整・メール対応などがこれに該当します。
なぜ今、事務代行が注目されているのか
特に中小企業やスタートアップ、フリーランスといった限られた人材で業務を回している組織では、こうした事務作業が経営者や現場スタッフの負担になるケースが多くみられます。
近年は「人手不足」「働き方改革」「業務のDX化」といった社会的背景からも、非コア業務のアウトソーシングが進み、事務代行は非常に注目されている領域です。
事務代行サービスの基本的な仕組み
事務代行サービスは、以下のような流れで提供されるのが一般的です。
1. 業務内容のヒアリング
・業者が依頼主(企業)の業務内容や課題をヒアリングします。
2. 業務範囲のすり合わせ・契約締結
・どこまで業務を任せられるかを決定し、委託契約を結びます。(NDAや業務委託契約書を交わすのが一般的)
3. 業務範囲の引継ぎと初期設定
・必要なマニュアルやツールの導入、業務フローの整理などを行います。
4. 実務スタート
・指定された業務を事務代行スタッフがリモートまたは常駐で対応します。

このように、業務の一部をプロフェッショナルに任せることで、社内リソースを戦略的業務に集中させることが可能になります。
▼インハウス事務との違い

事務代行はどんな企業に向いているか
事務代行は、以下のような企業にとって特に有効です。
・創業初期のベンチャー企業:本業に集中したいが、事務も必要
・社員数が少ない企業:リソース不足を感じている
・一時的に事務負荷が高まる企業:繁忙期だけ委託したい
・業務のDX化に乗り遅れている企業:外部のノウハウを活用したい
事務代行の対応範囲 | 実際に依頼できる業務一覧
事務代行サービスは、企業のバックオフィス業務を幅広くカバーできる点が大きな魅力です。
業務内容は多岐にわたり、日常的な事務作業から専門性の高い業務まで対応可能です。ここでは、実際に依頼できる主な業務範囲をカテゴリ別に紹介します。
1. 一般事務・営業事務
もっともニーズが高いのが、一般事務や営業事務に関する業務です。以下のような日常業務を効率的に代行してくれます。
・データ入力、整理(Excel、スプレッドシートなど)
・見積書、請求書の作成と管理
・書類作成やファイリング
・郵送物対応、資料印刷
・電話、メール対応(一時対応が多い)
・営業リストの作成、更新
・CRMツールやSFAの入力業務補助
これらは企業規模に関係なく発生する業務であり、担当者不在時や繁忙期だけのスポット依頼も可能です。
2. 経理・会計業務
次にニーズが高いのが、経理関連の業務です。会計ソフトを使った入力作業から領収書の整理まで、正確性が求められる分野でもあります。
・会計ソフトへの仕分け入力(free、弥生会計など)
・経費精算処理
・請求書の発行、管理
・領収書やレシートのスキャン、ファイリング
・月次決算補助
・年末調整資料の取りまとめ補助
特に最近はクラウド会計ソフトに対応した事務代行業者も増えており、ペーパーレス化、リモートワーク推進企業とも相性が良くなっています。
3. 人事・労務関連業務
専門性が高く、外注ニーズが増えているのが人事・労務関連の代行です。以下のような業務を社労士事務所と連携しながら行うケースもあります。
・勤怠データの集計
・給与計算補助(社労士連携)
・入退社時の書類管理、手続き補助
・採用事務(求人票の作成、応募者対応)
人事系のアウトソーシングは、法改正対応やセキュリティの観点も含めて業者選びが重要です。
4. オンラインアシスタント業務
リモート環境化下で急増しているのが、『オンラインアシスタント』という形態の事務代行です。SlackやChatwork、Zoomなどのツールを活用し、全国どこからでも業務が可能です。
・スケジュール調整
・会議資料の作成
・SNS運用補助
・Webサイトの更新、修正依頼
・ECサイトの在庫管理や受発注業務
これにより、物理的制約のない形で優秀な人材を活用できる点が評価されています。
5. 業界特化型の事務代行
近年では、業種特化型の事務代行サービスも増えてきています。たとえば、以下のようなケースです。
・不動産業界向け:契約書管理、物件情報の更新、入居者対応
・仕業向け:申請書類の作成補助、官公庁とのやり取り
・EC業界向け:商品登録、顧客対応、発送連携
専門的な業務にも対応可能なスタッフを揃えた業者であれば、業界知識に基づいた効率的な対応が期待できます。
事務代行のメリット

事務代行の活用は、コスト削減や業務効率化の面で注目を集めていますが、すべての企業にとって万能な解決策とは限りません。
ここでは、事務代行を導入することで得られる具体的なメリットと、注意しておきたいデメリットの両面を詳しく解説します。
メリット1:コア業務への集中が可能になる
事務代行を活用する最大のメリットは、自社のコア業務に集中できる環境を整えられることです。
営業・開発・マーケティングなど、企業の成長に直結する業務にリソースを集中させることで、生産性と収益性が向上します。
特にスタートアップや中小企業では、「少人数で多くの業務を回している」状態が常であり、定型的な業務を手放すことで大幅な業務改善が期待できます。
メリット2:人件費・採用コストの削減
事務代行を導入する大きな魅力のひとつが、人件費や採用・教育にかかるコストの削減です。
正社員や契約社員を雇用する場合、月額給与だけでなく、社会保険料、福利厚生費、通勤費、研修費用、採用広告費など、さまざまな間接コストが発生します。
これらを含めると、1名あたり年間300~500万円以上のコストがかかるとされており、小規模な企業やスタートアップによっては大きな負担となります。
経済産業省の「中小サービス事業者の生産性向上に関するガイドライン」によると、中小企業では、人件費の割合が総コストに占める割合が大きく、業務の外部化によってコスト構造の見直しを図ることが有効とされています。
(出典:中小サービス事業者の生産性向上に関するガイドライン | 経済産業省)
一方で、事務代行サービスは月数十万円から契約が可能で、必要なときに必要な分だけ業務を依頼できるため、固定費ではなく変動費としてコストの管理が可能になります。
これにより、繁忙期だけ業務量を調整するといった柔軟な対応が可能になり、経営の健全性にも寄与します。
たとえば、以下のような比較ができます。

このように業務の内容やボリュームに応じて外注することで、必要以上の人件費を抱えずに済むのが、事務代行の大きなメリットといえるでしょう。
メリット3:急な人員不足にも対応できる柔軟性
中小企業やスタートアップにおいては、限られた人員で複数の業務を兼任しているケースが多く、一人でも欠けると日常業務に支障をきたすことがあります。
特にバックオフィス業務を担うスタッフが休職・退職した際には、引継ぎが不十分なまま業務が滞るリスクもあります。
こうした状況に対して、事務代行は即戦力としての人材を迅速に確保できる点で非常に有効です。代行業者には多様な業務経験を持つスタッフが在籍しており、短期間で業務をキャッチアップして稼働可能な体制が整っています。
さらに、育児・介護・病院などで突発的に長期離脱者が出た場合も、事務代行を使えば業務の空白期間を最小限に抑えることができます。
人員の急募や再教育を行う必要がなく、必要な時間だけ業務を依頼することで、柔軟なリスク管理が可能になります。
以下は、実際によくある事例です。
・総務スタッフが産休に入る→産休期間中のみ代行を利用
・一人経理が退職→次の正社員が決まるまで事務代行でつなぐ
・繁忙期に限って業務量が急増→短期契約で事務代行を導入
このように、事務代行は組織の柔軟性を高め、突発的な人員の変化にも強い組織運営を可能にします。
メリット4:専門性の高い人材による業務品質の向上
事務代行サービスを提供する企業には、バックオフィス業務に精通した専門スタッフが多数在籍しており、経理、総務、秘書、請求書発行、顧客管理など、幅広い業務に対応可能なノウハウと実績を持っています。
たとえば会計事務所での実務経験を持つスタッフが対応する場合、会計ルールを踏まえた処理が可能になり、ミスのリスクを最小限に抑えられます。
経済産業省の「中小企業白書」では、事務代行サービスのような外部リソースの活用が、企業経営にとって有益であることが強調されています。
(出典:中小企業白書 | 経済産業省)
事務代行のデメリット
事務代行サービスには多くのメリットがある一方で、導入前に知っておきたいデメリットや注意点も多く存在します。正しく理解して活用しなければ、「期待していた成果が得られない」「かえって業務負担が増えた」といった事態になりかねません。
いかに、事務代行の代表的なデメリットを詳しく紹介します。
デメリット1:情報漏洩などのセキュリティリスク
事務代行では、顧客情報や財務データなどの機密性の高い情報を外部に共有する必要があるため、情報漏洩リスクはゼロではありません。
特に中小企業では、自社のセキュリティ対策は徹底しても、委託先の情報管理体制が不十分なケースもあります。
2025年にIPA(情報処理推進機構)が発表した「情報セキュリティ10大脅威」によれば、「内部不正による情報漏洩」と「サプライチェーンの弱点を悪用した攻撃」が常に上位にランクインしており、委託先のセキュリティ体制の見極めが重要であることがわかります。
(出典:情報セキュリティ10大脅威 2025 | IPA情報処理推進機構)
デメリット2:自社にフィットしない場合がある
事務代行サービスはテンプレート的な対応になりがちで、自社独自の業務フローや文化に合わない場合もあります。たとえば、日報の帳票の形式が企業ごとに異なる場合、業務のキャッチアップに時間がかかったり、成果物のクオリティに差が出たりすることがあります。
特に属人的な業務が多く残る企業では、「マニュアルがない」「引継ぎができない」といった問題により、代行側が業務をうまく遂行できないこともあるのです。
代行会社とうまく連携を図るには、以下の対策をしておきましょう。
・導入前に業務内容を棚卸しし、マニュアルを整備する
・試験導入や短期契約で相性を見極める
・定期的な進捗確認やフィードバックの場を設ける
デメリット3:コミュニケーションの手間が増える
外部スタッフとは日常的に隣で働くわけではないため、細かい確認や指示が発生する場面では、たいめんよりもやり取りの頻度が増える可能性があります。
特にリモート型の代行サービスを利用する場合、チャット・メール・オンライン会議などのデジタルコミュニケーションを前提とした体制が必要です。
うまく連携が取れないと「伝えたつもりが伝わっていなかった」「対応が遅れた」といったミスにつながることもあります。
このようなリスクを回避するには、以下の対策が有効です。
・業務ごとに指示書や業務フローを文書化する
・初回はこまめにミーティングを設け、理解度を確認する
・チャットツール(Slack、Chatworkなど)や、プロジェクト管理ツールを併用する
事務代行の料金相場と料金体系の違い

事務代行を検討する際、費用感や料金体系を正しく理解することは非常に重要です。
料金の仕組みを知らずに依頼すると、予算をオーバーしたり、想定より成果が出なかったりする可能性があります。
ここでは、事務代行の一般的な料金相場と料金体系の種類、それぞれの特徴と注意点を詳しく解説します。
料金相場の目安:時給型で2,000~4,000円が一般的
事務代行の費用は、依頼する業務の内容やスキルレベル、契約形態によって大きく異なります。特に多いのが「時給制」「月額固定」「成果報酬制」の3つで、それぞれ相場が変わります。
【主な料金相場】

主な料金体系の種類と特徴
①時間単価制(時給制)
もっとも一般的な契約形態で、実働時間に応じて費用が発生します。
メリット:使った分だけ支払うので無駄がない/短時間でも依頼しやすい
デメリット:業務が長引くとコストがかさむ/労働時間の管理が必要
おすすめのケース:依頼内容が明確で、短期間・短時間の対応を希望する場合
②月額固定制
あらかじめ業務内容と稼働時間を取り決めておき、毎月決まった金額を支払うプランです。業務範囲のカスタマイズが柔軟にできる代わりに、月額5~15万円程度が多い傾向です。
メリット:コストが安定する/担当者と継続的な連携がしやすい
デメリット:業務量が少ない月でも費用が発生/内容変更に手間がかかる
おすすめのケース:日常的に依頼する業務が多く、安定した支援体制を求める企業
③成果報酬制
業務の成果(例:データ入力件数、アポイント数、作成資料数など)に応じて支払う方式です。
メリット:費用対効果が明確/無駄な支払いがない
デメリット:定型業務には不向き/成果の定義が曖昧だとトラブルになりやすい
おすすめのケース:業務の成果が数字で可視化できる業種・内容(営業補助など)
料金体系選定時の注意点
業務内容とスキルレベルに合った料金かを見極める
→安さだけで選ぶと、経験不足や品質面で不安が残る場合があります。
見積書の内容を必ず確認する
→実費(交通費・ツール使用料)などが別途発生するかを確認しましょう。
トライアルを活用する
→初期段階でトライアルを実施することで、料金とサービス品質のバランスを把握できます。
コスト比較:自社雇用vs事務代行
例えば、月額20万円でアシスタントを直接雇用した場合、社会保険料や教育コストも含めると実質30万円以上になるケースもあります。
一方、事務代行では採用・教育コストがかからず、必要な時にプロ人材を活用できるのが利点です。
事務代行の失敗しない選び方

事務代行サービスは非常に便利ですが、「契約したのに思ったより成果が出なかった」「業務品質にバラつきがあった」などの失敗事例も少なくありません。
後悔しないためには、自社の業務内容や目的に合った業者を選ぶことが不可欠です。
個々では、事務代行サービスを選ぶ際に押さえておくべきポイントと、実際に失敗を防ぐためのチェックリストを紹介します。
1. 実績・導入事例が豊富かを確認する
まず見るべきは、企業の規模や業種、対応業務に関する具体的な導入事例があるかどうかです。
例えば、自社がSaaS企業であれば、同業種の支援実績があるか確認すると安心です。
【チェックポイント】
・顧客企業の業界、規模が自社と近いか
・実績として紹介されている業務内容が自社ニーズと合致するか
・導入後の改善効果が数字で提示されているか
2. 担当者のスキルと体制を見極める
事務代行といっても、担当者のスキルによって成果は大きく異なります。そのため、「どのような経験を持つ人が担当するか」「専任体制かどうか」を必ず確認しましょう。
たとえば、営業事務の経験がある人材であれば、商談管理や顧客管理ツールを円滑にこなせますし、簿記の資格保有者であれば経理業務でも安心です。
【チェックポイント】
・担当者が公開されているか。スキルシートの開示があるか
・引継ぎ体制、サポート体制は明示されているか
・複数人のチーム体制化、一人で対応か
3. セキュリティと情報管理体制の明示
事務代行では、機密情報や顧客データを取り扱うケースが多くあります。そのため、情報漏洩リスクへの対策やセキュリティ体制が整っているかは必ず確認が必要です。
経済産業省の『中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン第3.1版』では、外部業者を利用する際は以下のような基準を満たすよう求めています。
・契約書や覚書に具体的な対策を明記
・個別に契約や覚書を交わすことができる場合は、委託先のサービス規約や情報セキュリティ方針を確認
・個人情報保護法では、個人データの取り扱いを委託する場合は、必要かつ適切な監督の実行
(参考出典:中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン第3.1版 | 経済産業省 )
4. コミュニケーション体制と柔軟性
実務だけでなく、日々のやり取りがスムーズかどうかも大きな判断基準です。
報告頻度やツール(Slack、Chatwork、メールなど)が自社のワークスタイルに合うか確認しましょう。
また、急な業務依頼やトラブル発生時の対応が柔軟にできるかも、長期的な利用を考える上では重要です。
【チェックポイント】
・コミュニケーションツールや対応時間の柔軟性
・月次、週次レポートなど報告体制が明確か
・担当者の交代やリソース増減への柔軟性
5. 契約内容と料金体系を事前に明確にする
「思っていたより料金が高くなった」「対応がいの業務で追加請求された」といったトラブルもよくあります。
事前に「何が料金に含まれるか」「対応範囲・時間帯はどうか」など、契約内容を細かく確認し、不明点は書面で残すようにしましょう。
【おすすめのアクション】
・無料トライアルを活用して業務の相性を確認する
・契約書には業務範囲、料金、納品形式、責任分担などを記載
・トラブル時の対応フロー(返金・担当交代)も確認
まとめ:事務代行は「選び方」で決まる
本記事では、「事務代行とは何か」という基本的な理解から、対応範囲、メリット・デメリット、料金相場、失敗しない選び方までを解説しました。
事務代行サービスは、業務効率化や人件費削減、リソースの柔軟活用といった多くの利点をもたらす一方で、「選定の甘さ」が思わぬトラブルやコスト増を招くこともあります。
だからこそ、自社の課題と目的を明確にし、適切な業者とパートナーシップを組むことが成功につながるのです。
この記事を読んで「自社でも事務代行を検討してみたい」という方は、弊社の資料からダウンロードしてみてください。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

IS factory magazine(アイエス ファクトリーマガジン)編集部です。2022年開設。
定期的にインサイドセールスや営業に関するノウハウ、セミナー情報を発信しています。
