営業活動で成果を上がるためには、見込み顧客の”本音”を正しく把握し、的確な提案を行うことが欠かせません。しかし、「ニーズを聞き出せない」「案件の優先順位がつけにくい」と悩む方も多いのではないでしょうか。
そんな課題を解決するのがMEDDIC(メディック)です。MEDDICは、顧客の意思決定プロセスを体系的に把握し、受注確度を高めるための分析手法として世界中の営業組織で活用されています。
本記事では、ヒアリングの精度を高めるMEDDICの手法と営業のトーク事例を解説していきます。記事の最後には実務に役立つホワイトペーパーもご案内しています。営業成果を効率的に高めたい方は、ぜひ最後までご覧ください。
こんな方におすすめ
✓ 効率的に成果を上げたい営業管理者
✓ 見込み顧客のニーズを把握したい営業担当者
✓ 大手企業、公的機関、大規模な組織をターゲットに営業活動を行っている方
MEDDICとは?

MEDDIC(メディック)は、以下の6つの要素の頭文字をとったものです。
・Metrics(測定指標)
・Economic Buyer(決裁権者)
・Decision Criteria(意思決定基準)
・Decision Process(意思決定プロセス)
・Identify Pain(課題)
・Champion(擁護者)
もともとは1990年代、企業向けソフトウェアを提供していたParametric Technology(PTC)社が、売上を伸ばすためにこの手法を確立したと言われています。
つまり、MEDDICは単なる”営業トーク術”ではなく、「どのリードに注力すべきか」「なぜこの提案が通るのか」という構造的な判断基準を提供する仕組みです。
このため、営業活動が体系化されておらず、どこに注力すればよいか迷っているチームや、長い購買プロセス・複数のステークホルダーが存在する案件を扱う場合に特に強みを発揮します。
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営業がもっとラクになる!現場で使える営業フレームワークの基本と活用術【テンプレ付き】
BANTとの違いと使い分け
BANTとは、以下の4つの項目で構成されるフレームワークです。
・Budget(予算)
・Authority(決裁権)
・Needs(需要)
・Time frame(導入時期)
関連記事:ヒアリングの基本であるBANTCとは?各要素や効果をご紹介!
BANTは「このリードに予算があるか」「決裁者は誰か」「ニーズはあるか」「いつ買うか」というシンプルな観点で優先順位をつけるのに適しています。
一方、MEDDICはBANTに比べてより深く「誰が」「どのように」「なぜ」導入を決めるのかまで掘り下げています。
簡単に比較すると次のようになります。
| フレームワーク | 主な焦点 | 適用シーン |
|---|---|---|
| BANT | 予算・決裁者・ニーズ・時期 | 商談が短期・シンプルな構図の場合 |
| MEDDIC | 測定指標・決裁者・基準・プロセス・課題・擁護者 | 複数人物・長期購買・高単価案件 |
そのため、「検討先が多数の意思決定者を含む」「購買プロセスが複雑」「導入効果を数値で示したい」といった環境では、MEDDICを活用することで優先順位の精度が高まり、営業リソースの最適配分が可能になります。
逆に、比較的シンプルで少人数・短期間の案件では、BANTで十分なケースもあります。
MEDDICの6項目と活用方法
MEDDICは、成約率の向上に働きかける戦略として機能します。まずは、6つの項目の意味と活用方法をお伝えしていきます。

Metrics(測定指標)
Metricsとは、見込み顧客が自社サービス導入によって達成したい数値化された成果を指します。この指標を把握できると、提案が”感覚”ではなく”根拠”のあるものとなります。
具体的には、「利益率を〇%上げたい」「コストを〇%削減したい」「営業生産性を〇%改善したい」といった定量目標です。
営業担当者はこの指標をヒアリングで引き出すことで、提案内容を相手のビジョンと結び付けることができます。結果として「このサービスを導入することで、御社は△△という成果を出せます」という説得力につながります。
また、CRMなどにこの指標を管理項目として落とし込むことで、営業チーム全体で「どの案件が成果に直結しやすいか」を可視化でき、優先順位付けが簡易になります。
Economic Buyer(決裁権者)
Economic Buyerは、サービス導入の最終的な”支払い意思決定”を担う人物です。誰がこの権限を持っているのかを把握することは、営業プロセスを加速させる鍵となります。
BtoB営業では、受付や窓口の担当者が入り口になることも多いですが、真に決裁を持っているのは別の上位者であることが少なくありません。
営業担当者は、窓口の方から次のようなヒアリングを行うことが望まれます。
・「最終的にご判断される方はどなたでしょうか?」
・「どの部門が予算承認を出されるのでしょうか?」
こうして決裁者を特定できれば、その方が重視する価値観(ROI、戦略整合性、実績など)に応じたアプローチが可能になります。
Decision Criteria(意思決定基準)
Decision Criteriaとは、顧客が自社内で”このサービスを選ぶ/選ばない”を決める判断の基準です。機能・価格・サポート・実績などが含まれます。
例えば、「○○という機能が必須」「導入実績が5社以上」「サポートは24時間対応であること」などの条件が該当します。
営業としては、これらの条件を事前に把握し、提案の中で「御社の○○基準を満たしています」「△△という点では競合を上回っています」と示せると、意思決定者に刺さる提案になります。
Decision Process(意思決定プロセス)
Decision Processとは、顧客がサービス導入を決めるまでに通る内部プロセスの流れを指します。誰がいつどのようなステップで判断するかを理解することが重要です。
導入検討から契約締結までのプロセスには、例として「社内決裁→法務チェック→予算承認→導入検討会→最終承認」が含まれることもあります。
ヒアリング例としては、
・「ご検討はどのような承認ステップを経て進むご予定でしょうか?」
・「通常、契約決定までにどれくらい日数を想定されていますか?」
このようにプロセスを把握すると、商談中に”停滞”が発生しても事前に対策を打つことができます。
Identify Pain(課題)
Identify Painは、見込み顧客が抱えている本質的な課題を明らかにすることを指します。課題が明確でなければ、導入の”緊急性”を作れません。
例えば「既存のシステムが老朽化し維持コストが上昇している」「営業リードの質が低く、新規契約数が伸び悩んでいる」などが挙げられます。
ヒアリング例
・「現在ご利用中のサービスで不便と感じている点はございますか?」
・「その課題が未解決のままだと、どの程度影響がありますでしょうか?」
課題のインパクトを数値化(例:年間コスト🔺20%、リード獲得数+30件)できると、提案時の説得力が飛躍的に上がります。
Champion(擁護者)
Championとは、顧客組織の中であなたのサービス導入を熱望し、内部で推進してくれる味方の存在です。この人物の存在が、複雑な購買プロセスを通す鍵になることがあります。
擁護者は必ずしも最終決裁者ではありませんが、導入メリットを理解し、社内で情報を拡散したり、決裁者に働きかけたりしてくれます。
確認すべきヒアリング例
・「社内で特に強く導入を推進しておられる方はいらっしゃいますか?」
・「その方はどの部門の方になりますでしょうか?」
擁護者と信頼関係を築けると、案件が予想外に動くケースもあります。
MEDDICのヒアリング例
MEDDICは、成約に貢献する有益な情報です。営業する際は、6つの項目を意識したヒアリングを実施します。以下のトーク例を参考に営業活動に取り入れてみましょう。
Metrics(測定指標)
・導入後に達成したい指標はありますか?
・どの程度のコスト削減率を見込んでますでしょうか?
・サービスの利用に期待する効果を教えていただけますでしょうか?
Economic Buyer(決裁権者)
・次回は、どなた様宛におかけすればよろしいでしょうか?
・〇〇のお問い合わせは、こちらの窓口でよろしかったでしょうか?
・ご担当者様のお名前をお伺いしてもよろしいでしょうか?
Decision Criteria(意思決定基準)
・サービスを利用するにあたり重視している要素はありますか?
・弊社サービスの〇〇に魅力を感じていただいている方が多いです。
・ご予算や機能面など想定されている条件はありますか?
Decision Process(意思決定プロセス)
・どのぐらいまでにご返答いただけますでしょうか?
・活用までにどのぐらいの期間を想定されてますでしょうか?
・現在のご状況をお聞かせいただけますでしょうか?
Identify Pain(課題)
・サービスの導入を検討している経緯をお聞かせいただけますでしょうか?
・似たようなサービスをご利用されたことはありますか?
・現在、ご利用中のサービスで課題に感じていることはありますか?
Champion(擁護者)
・私〇〇と申しますが、ご対応いただいた方のお名前お伺いしてもよろしいでしょうか?
・〇〇を提供している会社ですが、こういったサービスはご活用されたことはありますか?
・資料をご担当者様にお渡しいただくことは可能でしょうか?
MEDDICを活用するメリット
MEDDICを営業活動に活用するメリットは、複雑化した顧客ニーズの理解と適切な戦略を実施できることです。具体的な効能は以下にまとめます。

顧客ニーズに合わせた提案ができる
MEDDICは、見込み顧客がサービスを導入するプロセスの詳細を明らかにします。営業担当者が企業の課題や目標を正確に認知できると、提案内容が顧客のニーズに適合しやすくなるのです。顧客の心理を捉えた提案は、成約率の向上に繋がります。
営業活動を効率化できる
MEDDICは、営業活動の効率化を実現します。取得した情報は、顧客管理ツールに集約し一覧化しましょう。これにより、確度の高い見込み顧客を抽出できるようになります。
営業担当者はアプローチの優先順位を速やかに把握できるため、リスト精査にかける時間を短縮することが可能です。
営業チーム全体の成果を最大化できる
MEDDICは、成功体験の分析に役立ちます。サービスの市場や業界の動向など、ヒアリング内容は活動履歴に残しましょう。効果的な事例はチーム全体に共有し、誰もが再現できる体制を構築します。
営業担当者のスキル向上は、成果の創出だけではなくモチベーションの維持にも有効です。業界知識の習得には、こちらの理解度チェックテストをご活用ください。

成果の予測精度を高める
MEDDICの活用は、営業活動の成果に対する予測精度を高めます。見込み顧客の進捗や成約率が明確になることで、戦略が立てやすくなるでしょう。
また、営業管理職はクライアントや上層部に活動内容を報告する必要があります。定例会議では具体的な成果予測を基に対策を立案できるため、説得力を高めることができます。
MEDDICC、MEDDPICとの違い
MEDDICと似た言葉に「MEDDICC」と「MEDDPIC」の2つがあります。これらは、MEDDICの6つの要素に新たな評価項目を加えたフレームワークです。MEDDICの進化版であり、追加項目以外は同様の意味で使われています。
MEDDICC
MEDDIC+C(Competition:競合)を加えたモデルです。
競合他社が検討対象に入っている際、「どこに勝ち筋があるか」「どう差別化するか」を明確にするために用いられます。
MEDDPIC
MEDDIC+P(Paper Process:契約書/経理手続き)を加えたモデルです。
契約書や承認プロセスが複雑な大企業や公共機関を対象とした営業では、プロセスがブレーキになることがあるため、事前の把握が効果的です。
どちらも「MRDDICをベースに、さらに深く・広く商談をカバーする」ための拡張版と捉えると理解しやすいです。
MEDDICを活用するコツ
営業活動でMEDDICを活用するには、集約した情報を適切に管理することが大切です。ここでは、デジタルツールを使用したインサイドセールスの運用事例を紹介していきます。

①活動内容を記録する
活動内容の収集・分析は、案件の進捗状況を一覧化できる顧客管理ツールで管理します。アプローチ後は、MEDDICのヒアリング内容を記録に残しましょう。
顧客管理ツールでは、担当者の名前や営業ステータス(受注確度)、次回アクション予定日などMEDDICの入力項目を設けます。案件の優先順位を明確にするには、営業プロセスで重視される情報を整理することが重要です。

②進捗状況を分析する
MEDDICの集約したデータは、グラフや表で可視化します。例えば「営業ステータス」をグラフ化した場合、確度が高いリストの割合や優先的にアプローチする案件の抽出が可能です。
営業担当者はリストの進捗状況を迅速に把握できるため、見込み顧客の購買プロセスに応じた対策を立てやすくなります。
③営業戦略を実行する
MEDDICを活用したアプローチを実行します。見込み顧客にささったポイントや断り理由は、効果的な営業プロセスの立案に有効です。活動内容は記録し、成功事例・改善策を今後の営業活動に活かしましょう。

④事例を共有する
営業チーム全体をブラッシュアップするには、成功事例や改善策を共有する必要があります。共有する際は、集計した活動記録を用いると正確な戦略を伝えることができます。各チームの成功パターンを取り入れて、再現性のある組織を構築していきましょう。
営業経験に関わらず誰もが効果的な事例を実践するには、トークスクリプトの活用や実践的なロープレ研修が有効です。
関連記事:営業トークスクリプトの作り方!テレアポの質を高める運用方法を事例で解説

MEDDICを活用した営業プロセスにより、営業担当者が見込み顧客のニーズに適した戦略を実行できるようになります。
MEDDICを取り入れて成果に繋げよう
MEDDICは、顧客ニーズを的確に判断するためのフレームワークです。営業活動では、見込み顧客の状況を分析し、アプローチの優先順位を見極めることが求められます。
MEDDICを活用して、相手の営業プロセスに寄り添った提案を実行しましょう。
また、弊社インサイドセールス支援ではMEDDICを顧客管理ツールに集約し、リアルタイムで動向を分析できる営業体制を提供しております。
BtoBやエンタープライス企業など戦略的な営業活動を検討されている方は、こちらのサービス資料も参考にしてみてください。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

IS factory magazine(アイエス ファクトリーマガジン)編集部です。2022年開設。
定期的にインサイドセールスや営業に関するノウハウ、セミナー情報を発信しています。
