皆さん、こんにちは。
IS factory magazine編集部です。
デジタル化が進む営業組織では、「セールスイネーブルメント」という新たな人材育成の取り組みが注目されています。
セールスイネーブルメントは、組織の課題改善を目的に導入されており、継続的に成果を出し続ける組織づくりの基盤となる戦略です。
そこで今回は、セールスイネーブルメントの意味や成功事例を紹介していきたいと思います。導入方法も解説しているので、ぜひ自社に取り入れてみてはいかがでしょうか。
―こんな方におすすめ―
✔ 営業人材の属人化を解消したい方
✔ 営業組織全体のスキルを底上げしたいと考えている経営陣
✔ デジタルツールを活用して営業を効率化したい方
セールスイネーブルメントとは
セールスイネーブルメント(Sales enablement)とは、営業担当者全員が成果を創出できる組織を構築する手法です。
研修やコンテンツ制作などの施策を実施して、貢献度を数値化していきます。測定した数値を元に改善を行い、営業力を底上げする取り組みです。
分析結果から効果的なアプローチ方法を組織全体に共有することで、誰が担当しても同様の成果を生み出せるようになります。
セールスイネーブルメントのポイント
セールスイネーブルメントで抑えておきたいポイントは、全体の統合と可視化です。従来の営業組織では、顧客へのアプローチ方法は営業担当者個人の考え方に託されており、成果が偏っていました。
また、「営業はセールス部門」「研修は人事部門」「資料作成はマーケティング部門」と、分業型が主流とされていました。そのため、組織全体からみた改善策の打ち出しが困難に。
そこで、担当している業務をデータ化して共有し、一連の営業プロセスから改善を試みるというセールスイネーブルメントの手法が導入されたのです。
セールスイネーブルメントの市場
セールスイネーブルメントの市場規模は、年々拡大しています。
CSO Insights社が2019年に発表したアメリカ企業を対象にした調査では
セールスイネーブルメントに取り組む企業の割合
出典:CSO Insights(https://salesenablement.pro/assets/2019/10/CSO-Insights-5th-Annual-Sales-Enablement-Study.pdf)
2016年 32.7%
2017年 59.2%
2018年 61.0%
と2016年~2018年の3年間で、セールスイネーブルメントの市場が約2倍に増加しています。
また、日本国内のセールスイネーブルメントの認知率を公表しているSALESCORE株式会社の「Japan Sales Enablement Report 2023」では、
日本におけるセールスイネーブルメントの認知率は17.2%
出典:ALESCORE株式会社(https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000037.000043275.html?_fsi=e7XMhg3Z&_fsi=e7XMhg3Z)
役職別では部長相当の職が一番高い23.9%
と、上層部の認知度が高いという結果から、市場の拡大が見込まれています。国内外問わずセールスイネーブルメントに関心が高まっているのです。
セールスイネーブルメントが注目される背景
次に、セールスイネーブルメントが注目されている背景を3つご紹介していきます。
属人化の防止
人材の流動性が高まっているビジネス市場では、担当者の急な欠勤や退職に備えておかなければなりません。
営業担当者の活動がブラックボックス化(進捗を誰も把握できていない状況)していると、業務の引き継ぎができなくなります。
営業活動を継続的に進めるために、属人化を防ぐ取り組みとして、セールスイネーブルメントが検討されているのです。
デジタルツールの普及
働き方改革でDXが推進され、SFA(営業支援ツール)やMA(マーケティングツール)などのデジタルツールの普及が進んでいます。
音声データ・アポイント率・受注数といった営業活動の記録が集計できるようになったことで、セールスイネーブルメントの導入が可能に。
また「デジタルツールを効率よく使用したい」と考える経営陣の間で手法が広まったため、戦略に取り入れる企業が増えているのです。
顧客ニーズの多様化
インターネットの浸透により、顧客の購買プロセスが多様化しています。そのため、顧客のニーズに合わせた提案力の強化が求められているのです。
顧客の動向を掴むには、マーケティング部門や営業部門が連携し、効果的なアプローチ方法を生み出す必要があります。
そこで、組織全体から施策を考案していく、セールスイネーブルメントが導入されるようになりました。
セールスイネーブルメントの導入方法
ここで、セールスイネーブルメントの5つの導入手順をお伝えしていきます。
①セールスイネーブルメントの担当者を選定
②営業活動のデータ収集・整備
③目標管理体制の設計
④蓄積したデータの分析と検証
⑤ノウハウの共有とPDCAサイクルの確立
①セールスイネーブルメントの担当者を選定
まず、セーブルイネーブルメントの取り組みを、社内に広めていく人材を選定しましょう。欧米では、セールスイネーブルメント専門の部署を設けている企業も多いです。
営業組織の強化に向けた戦略のため、営業担当者からの選出や管理職の経験を持つ人材が役割を担っている会社もあります。
部門の垣根を超えた連携体制が求められるので、コミュニケーション力やオペレーション能力を重視して選定するのも良いでしょう。
②営業活動のデータ収集・整備
次に、営業活動のデータ収集と整備を行います。自社の営業プロセスを踏まえて、各工程の可視化を視野に、デジタルツールを導入しましょう。営業のデータ管理に必要なツールはこちらを参考にしてみてください。
成果をデータ化できたら、営業担当者を集めてナレッジ共有の時間を設けましょう。部署ごとに行う朝礼や、個別に対話する1on1でヒアリングを実施するのもお勧めです。全体の成果を集計し、課題と効果的な施策を見極めていきます。
③目標管理体制の設計
評価やセールスイネーブルメントの成果を測定するため、営業活動のKPIを設けましょう。指標をエクセルやパワーポイントなどにまとめて、活動の全体を数値化すると、個人の施策がつかみやすくなります。
ナレッジをヒアリングする際は、作成した指標管理シートに沿って対話を進めると、営業担当者の行動がみえてくることも。
④蓄積したデータの分析と検証
蓄積したナレッジや活動データから、どの成果を検証するのか、事前に決めておきます。アポイント数・担当者接続率・担当者断りなど、1ヵ月の稼働でも集まるデータは膨大です。
セールスイネーブルメントの取り組みや組織のKPIを定めると、着目するデータが明確になります。前月比の比較もできるので、対策が立てやすくなるでしょう。
⑤ノウハウの共有とPDCAサイクルの確立
ナレッジを通して得たノウハウは、上長やメンバーに共有します。全体で共有する場は、定例会議で設けると良いでしょう。
組織全体でノウハウを実践し、結果の検証と改善を行うのです。施策の成果が出なかった場合も、今後のアプローチ方法を開拓するために、有益な情報となります。
大切なのは「なぜ成果につながらなかったのか」「次にどう課題を解決していくか」を考え、施策を実践し続けることです。
<ノウハウ共有の場に活用されるキックオフミーティングの事例はこちら>
セールスイネーブルメントをサポートするためのツール
セールスイネーブルメントを効果的に導入するためには、営業チームの活動をサポートするツールの活用が重要です。適切なツールを選定し、活用することで、営業プロセスを効率化して成約率の向上や営業チーム全体のパフォーマンスを強化することができます。
ここでは、セールスイネーブルメントを支援する代表的なツールを紹介します。
CRMツール
CRMツールは、顧客データややり取りの履歴を一元管理し、営業活動を最適化するための基本ツールです。
営業担当者は、顧客ごとのニーズや関心事を把握し、最適なタイミングでアプローチが可能となります。また、チーム間の情報共有を促進し、全員が同じ情報に基づいて行動できるため、営業活動が効率化されます。
代表的なCRMツール
・Salesforce:カスタマイズ制が高く、大企業から中小企業まで幅広く利用されている世界的なCRMプラットフォーム。
・HubSpot CRM:使いやすさが特徴。MA(マーケティングオートメーション)との連携も強力です。
セールスコンテンツ管理(SCM)ツール
営業活動における提案資料やホワイトペーパー、ケーススタディなどのコンテンツを管理し、適切なタイミングで提供するのがセールスコンテンツ管理(SCM)ツールです。
営業担当者は顧客の状況に合わせてすぐに最適な資料を提案できるため、商談の質が向上します。
代表的なSCMツール
・Seismic:AIを活用して営業担当者が最適なコンテンツを迅速に選択できるようなサポート。
・Highspot:営業活動に必要なコンテンツを整理し、マーケティングとの連携を強化。
セールスイネーブルメント導入のメリット
セールスイネーブルメントを導入すると、どんなメリットがあるのでしょうか?期待できる効果をお話していきましょう。
人材育成の仕組み化
セールスイネーブルメントを取り入れた研修で、入社時から効果的な営業のアプローチ手法を学ぶことができます。
取得したデータを参考に改良された施策をマニュアル化して展開すると、実践的なノウハウを身につけられるのです。
配属後はすぐに即戦力として活躍できるので、マネジメント時間も短縮できます。他の業務に工数をかけられるので、生産性の向上も期待できるでしょう。
顧客ニーズの把握
顧客のニーズや市場の動向を把握するには、営業部門とマーケティング部門の協力が欠かせません。各部門がナレッジを共有し、顧客のニーズに合わせた施策を打ち出すことで、成果につながります。
例えば、営業部門では顧客が関心を持っている情報を商材説明に加えると、サービスに興味を持ってもらえる可能性も。
マーケティング部門では、顧客の声に合わせたコンテンツ制作で、問い合わせリードを獲得できるケースもあります。双方の連携を深め、組織全体から施策を打ち出していきましょう。
セールスイネーブルメントの成功事例
では次に、自社で実施されたセールスイネーブルメントの成功事例をご紹介していきます。
営業活動の可視化
リモートワークで営業支援を行う弊社のインサイドセールスでは、属人化を防ぐため、営業活動の可視化に取り組んできました。
SFA・CRM・MA・CTIなどのツールを積極的に活用し、営業活動をデータ化したのです。その結果、架電の音源、商談の録画、個人のアプローチ先まで、営業担当者全員が確認できるようになりました。
進捗の把握が可能になったことで、営業担当者不在時のリストの引き継ぎなど、社内連携が円滑に進められています。
営業コンテンツの共有
スクリプトやトーク事例など、作成した営業コンテンツをツールで共有しています。共有されたコンテンツを活用し、営業担当者のアプローチ結果を検証しました。
そこで「顧客がお断りされる理由」が集中していることが分かり、スクリプトの変更や切り返しトークの対策を立てることに。
ナレッジを分析し、新たな施策を打ち出すことで、提案力の向上に大きく貢献しています。
スキルの標準化
実際に営業現場で使用する商材や、蓄積した事例を活かした研修方法を取り入れています。
その一つがマーケティング部門、セールス部門全員が参加するロールプレイングリレーです。様々な商材を担当してきた経験豊富なメンバーのフィードバックで、スキルの標準化を目指しています。
研修期間中から成功事例や架電の音源を聞くことができるので、スピード感のある人材育成が見込めるのです。導入後は、配属初月での目標達成や、音源がモチベーションになっているというメンバーの声が届くようになりました。
<インサイドセールスチームで働くメンバーのインタビュー記事はこちら>
セールスイネーブルメントを取り入れた営業組織の構築をお考えの方は、こちらを参考にしてみてください。
セールスイネーブルメントに関連する本
最後にセールスイネーブルメントを学べる本を紹介します。導入の際は、ぜひ参考にしてみてはいかがでしょうか。
「セールス・イネーブルメント 世界最先端の営業組織の作り方」
日本でセールスイネーブルメントを広めた第一人者として知られている株式会社R-Square & Company代表取締役社長の山下貴宏氏が執筆した書籍。セールスイネーブルメントの構築方法や導入事例を解説しています。
出典:かんき出版
「営業力を強化する世界最新のプラットフォーム セールス・イネーブルメント」
山下貴宏氏が執筆したセールスイネーブルメントの、人材育成の仕組みが書かれている書籍。育成に役立つ指標やスキルの標準化について紹介しています。
出典:かんき出版
セールスイネーブルメントの導入で成果を創出する営業組織へ
今回は、セールスイネーブルメントの意味や導入手順、事例などを詳しく解説してきました。
セールスイネーブルメントは営業組織全体を可視化し、改善に向けた取り組みを実施することで、生産性を高めることが期待できます。
営業活動がデジタル化している今だからこそ、自社のプロセスと向き合い、効果的な施策を考える必要があるのです。
時代と共に変化する顧客ニーズに対応した戦略で、成果を創出し続ける組織づくりを目指していきましょう!
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
IS factory magazine編集部です。2022年開設。
定期的にインサイドセールスや営業に関するノウハウを発信しています。