新規顧客を増やすのは大切ですが、営業やマーケティングの現場では「既存顧客の売上向上」に注力する企業も多いのではないでしょうか?
特に、アップセル・クロスセルは顧客満足度を高めながら売上を増やせる代表的な施策です。
本記事では、アップセル・クロスセルの基本から具体的な事例、活用方法までを解説します。インサイドセールスアウトソーシング事業を提供する弊社のトーク例や図解を交えて、実践的なノウハウをお届けします。
こんな方におすすめ
✓ アップセル・クロスセルの意味を理解して実践に落とし込みたい方
✓ 押し売りと受け取られないためのトークの工夫を知りたい方
✓ 自社に活かせる事例を探している方
アップセルとは?意味と事例

アップセルとは、顧客が検討・購入している商品やサービスよりも上位の商品に誘導する提案手法です。
【具体例】
・飲食店の場合:SサイズからLサイズへの変更
・SaaSの場合:スタンダードプランからプレミアムプランへ
・BtoBサービスの場合:基本契約に加えた追加機能パックの導入
このように、顧客のニーズを満たす選択肢を提示し、同じ商品のより高単価なプランを購買してもらうのがアップセルです。
クロスセルとは?意味と事例
クロスセルとは、顧客が購入しようとしている商品と関連する別の商品をセットで提案する手法です。
【具体例】
・小売業の場合:スマートフォン購入時にケースやフィルムを案内
・ECサイトの場合:プリンターを買う人にインクや用紙を提案
・SaaSの場合:基本システム導入時に運用サポートプランや分析ツールを追加提案
これにより、顧客の購入体験をより便利で安心なものにしつつ、企業側も収益拡大を実現できます。
関連記事:CXをインサイドセールスの営業戦略へ!必要性や向上の取り組みをご紹介
アップセルとクロスセルの違い
アップセルとクロスセルは混同されやすい用語ですが、意味は異なります。両者を正しく理解することで、営業・マーケティングで実行すべき施策が明確になります。
・アップセル
顧客が検討している商品よりも、より高価値・高価格な商品や上位プランにアップグレードしてもらう提案手法
・クロスセル
顧客が購入しようとしている商品に対して、関連する商品をセットで追加提案する手法
顧客体験価値の向上と売上の最大化を目指す際は、双方をバランスよく取り入れることが重要です。
【業界用語を習得したい方はこちら】

なぜアップセル・クロスセルが重要なのか

アップセル・クロスセルは、うまく設計すれば売上の拡大と顧客満足度の向上を同時に実現できるのが大きな強みです。ここでは、具体的なメリットを解説します。
新規顧客獲得より既存顧客深耕が効率的
マーケティングの基本として、「新規顧客獲得コスト(CAC)は既存顧客維持コストの5倍かかる」という1:5の法則があります。
実際に、電通グループが公表した「世界の広告費成長率予測(2023~2026)」でもデジタル広告費の上昇が示されており、新規顧客獲得の難易度が高まっていることがわかります。
(参考:https://www.group.dentsu.com/jp/news/release/pdf-cms/2023060-1213.pdf)
既存顧客に対してアップセル・クロスセルを実施することは、売上拡大を実現するために欠かせない施策です。
売上成長に直結する3つの効果
アップセル・クロスセルがもたらす主な効果は以下の3つです。
①顧客単価の向上
→顧客一人あたりの売上を増やせる
②LTV(顧客生涯価値)の最大化
→継続利用や購入期間が長期化しやすい
③解約率の低下
→顧客にとって便利で最適な提案となり、満足度が上がる
この3つの効果は、それぞれが独立しているのではなく相互に連動します。顧客単価が上がればLTVも向上し、解約率が下がればLTVが最大化される仕組みです。
アップセル・クロスセルは、商品やサービスを提供する企業収益の基盤を強化する最重要施策と言えます。
アップセル・クロスセルの実践方法

アップセル・クロスセルを成功させるためには、「上位プランがあります」「関連商品もどうですか」と伝えるだけでは不十分です。
大切なのは、顧客が納得して価値を感じられる提案をすることです。この章では、実践方法をご紹介します。
提案のタイミングを見極める
アップセル・クロスセルで最も重要なのは、提案するタイミングです。顧客の心理が「もっと便利にしたい」「今の状態では不足しているかも」と動いた瞬間に提案することで、自然に受け入れてもらいやすくなります。
ECの場合
・購入完了直前のカート画面
・商品詳細ページやおすすめ商品の紹介欄
・配送オプションの選択時
SaaSの場合
・契約更新のタイミング
・利用ユーザー数やデータ容量が増加したタイミング
・新機能をリリースした直後
BtoB営業の場合
・課題ヒアリング後、顧客ニーズが明確になった瞬間
・現行プランの利用状況を共有した際に「不足している」と感じてもらえたとき
提案のタイミングを外すと売り込みと受け取られがちですが、適切な瞬間を捉えれば「顧客の課題を先回りして解決してくれる」と評価されます。
押し売りにならない提案トーク例
アップセル・クロスセルが敬遠される理由の一つが、押し売り感です。自社都合のトークは、顧客からの信頼を失いかねません。適切な提案をするには、顧客のメリットを起点にしたトークが必要です。
【失敗例】
・「こちらの上位プランは利益率が高いのでおすすめです」
→顧客にとっての必要性が感じられず、自分たちの利益のために売っていると懸念されやすい
【成功例】
・「現在の利用状況ですと、上位プランをお使いいただくと作業時間が30%削減できます」
→顧客が得られる成果にフォーカスしており、数字や事例を用いて提案することでプランの価値が伝わりやすい
【トークをフォーマット化したい方はこちら】

デジタル施策(EC・SaaS)の具体例
デジタル領域では、アップセル・クロスセルの施策を自動化して運用することができます。CRMやMAツールの活用により、効率的に進捗を管理できるため顧客に合わせたパーソナルな提案が可能です。
ECサイトでの活用例
・レコメンド表示
「この商品を買った人は〇〇を一緒に購入しています」
・バンドル販売
複数商品をセットで購入すると割引になる仕組み
・カート画面での提案
「あと1,000円で送料無料です。人気の△△を追加しませんか?」
SaaSでの活用例
・機能制限解除プラン
「利用データ量が上限に達しました。上位プランで継続利用できます。」
・アドオンサービス
「サポート対応時間を拡張できます」「AI分析機能を追加できます」
・利用状況に応じた自動通知
「利用率が80%を超えました。上位プランをご検討ください」
デジタル施策の強みは、人手をかけずに顧客一人ひとりに最適な提案を自動化できることです。CRMやMAツールと連携させることで、タイミングや内容を最適化し、営業効率を高められます。
インサイドセールスを活用したアップセル・クロスセル事例

インサイドセールスの導入は、新規アポイントの獲得だけではなく、アップセル・クロスセルの機会を広げる有効な手段になります。以下に、当社インサイドセールス支援の事例をご紹介します。
休眠顧客を掘り起こし、再利用からアップセルに成功した企業事例
求人サービスを展開する会社では、1年以上利用がない休眠顧客へのアプローチが課題でした。そこで、インサイドセールス支援を導入し期間限定のキャンペーンを実施。
約15日間の短期プロジェクトでは、休眠顧客へのキャンペーン申し込みの後押しと顧客状況のヒアリングを行いました。
結果として、リストに対し0.8%の申込書を回収。休眠顧客に再びサービスを使ってもらうことで、新たな取引の再開を実現しました。
成果と学び
・休眠顧客は新規顧客よりも効率的に売上拡大が見込める
・キャンペーンというきっかけがアップセルを後押しする
・インサイドセールス支援の活用により短期間でプロジェクトを遂行できた
トライアルプランから長期契約へつながった企業事例
BtoBサービスを展開する会社では、インサイドセールス支援の活用を検討していました。そこで、短期間で営業支援の質を体感できるトライアルプランをご案内。
期間中には、実際のアポイント獲得や顧客とのコミュニケーションプロセスを確認していただきました。
その結果、企業側が「自社に最適な運用ができる」と納得し、トライヤル終了後に長期契約へ移行。最終的に安定的な取引につながるきっかけとなりました。
成果と学び
・顧客がサービスを体験する場を提供することで、導入の不安を解消しやすくなる
・小規模な契約から始めても、信頼構築によって長期契約に移行できる
・サービスの価値を実感してもらうことで、価格以上の納得感を生み出せる
小さな依頼から広域案件へと発展した企業事例
派遣事業を展開する会社では、派遣依頼に関する新規のアポイント獲得をインサイドセールス支援に委託。獲得したアポイントの依頼内容は、当初は限定的で小規模な案件に見えました。
しかし、実際の商談で丁寧にヒアリングを進めた結果、複数の作業工程で人員が不足しているという本質的な課題が明らかになりました。
また、「他分野でも人員を募集している」という情報も引き出せたため、社内の専門部門を紹介。派遣事業だけでなく、部門を横断するクロスセルを実現しました。
成果と学び
・インサイドセールス、フィールドセールスの役割を分担する
・商談時のヒアリングで顧客ニーズを顕在化する
・社内連携によりアップセル、クロスセルの双方を同時に実現する
【インサイドセールスの活用事例をもっと知りたい方はこちら】

アップセル・クロスセルを成功させるポイント

顧客にとって納得感のある提案を実現するには、組織体制と部門間の連携を強化する必要があります。ここでは、成功させるための2つのポイントを紹介します。
顧客理解とパーソナライズ
アップセル・クロスセルの成否を分けるのは、顧客理解の深さです。購買履歴や利用データを分析し、顧客が「今、欲しい」と思う提案を行うことで、受け入れてもらいやすくなります。
購買履歴の活用例
過去にプリンターを購入した顧客に、インクやメンテナンスサービスを提案
利用データの活用
SaaS利用者がストレージ容量の80%を使っている場合に、上位プランを案内
このように、「誰に・いつ・何を提案するか」を精度高く設計するにはCRMやMAツールの活用が有効です。データに基づいた提案は、顧客満足度を高めると同時に売上拡大にも直結します。
マーケティング・インサイドセールス・営業部門の連携
アップセル・クロスセルを短期間で実施するのは難しく、部門を横断する連携体制が求められます。
特に、マーケティング・インサイドセールス・営業部門がそれぞれの役割を果たしながら密に連携することが成功の秘訣です。
マーケティング
購買データや利用傾向を分析し、アップセル・クロスセルが有効な顧客をリスト化する
インサイドセールス
顧客の状況に合わせて電話やメールでアプローチを実行。利用状況をヒアリングし、適切なプランやサービスを案内する
営業(フィールドセールス)
提案内容を深掘りし、クロージングへ結びつける
アップセル・クロスセルの成功率は、部門間の役割の明確化や情報共有の透明性により大幅に変わります。
関連記事:インサイドセールスとフィールドセールスの違い | 「THE MODEL」との関連性もご紹介!
まとめ|アップセル・クロスセルで売上最大化を実現する
アップセルは「高価値な上位プランへの誘導」、クロスセルは「関連商品の追加提案」を意味します。
新規顧客を一から獲得するよりも効率的に売上を伸ばせる手法であり、顧客単価の向上やLTVの最大化、解約率の低下といった効果が期待できます。成功させるためのポイントは、以下の3つです。
顧客理解とパーソナライズ
データをもとに「誰に・いつ・何を提案するか」を設計する
適切な提案タイミング
顧客が「もっと便利にしたい」と思った瞬間を逃さないようにリストを管理する
押し売りにならない価値提供
顧客の課題解決をベースにした提案を行う
これらを徹底することで、既存顧客との関係を深めながら自然に売上を拡大することができます。アップセル・クロスセルは、効果的な販売テクニックに留まらず、顧客体験を高める取組みでもあるのです。
しかし、実際にはタイミングの見極めや提案内容の設計、組織の連携体制に悩む企業担当者も少なくありません。そのような場合は、専門ツールの活用や外部支援サービスを取り入れることで、施策を軌道に乗せることが可能です。
実践力の強化に役立つお役立ち資料を無料配布中
アップセル・クロスセルの施策を実践するには、顧客への提案手法や有効なトーク事例を身につける必要があります。
本資料では、
・架電ロープレの評価シート
・商談ロープレの評価シート
・インサイドセールス用語の理解度テスト
をまとめており、理論を現場で使える施策に落とし込める内容となっています。組織全体のスキルアップを図りたい方は、こちらからダウンロードいただけます。
顧客と長期的な関係性を築くための組織体制を構築し、売上拡大につなげていきましょう。最後までお読みいただき、ありがとうございました。

IS factory magazine(アイエス ファクトリーマガジン)編集部です。2022年開設。
定期的にインサイドセールスや営業に関するノウハウ、セミナー情報を発信しています。
