インサイドセールスとは、電話やビデオ通話などのオンラインツールを活用して非対面で営業活動を行う内勤型の営業手法です。
近年、働き方改革の進展や顧客の購買プロセスの変化に伴い、多くの企業がインサイドセールスを内製化しています。
しかし「内製化はしたものの効果的に運用できていない」、「期待する効果が得られない」といった課題に直面している企業も少なくありません。
そこで今回は、インサイドセールスを成功に導く8つのステップを解説します。これから内製化を始める企業や運用に課題を感じている方は、ぜひ参考にしてみてください。
関連記事:【インサイドセールスとは】役割や重要性、必要なスキルなどの基礎知識を学ぶ!
こんな方におすすめ
✔ インサイドセールスの立ち上げを成功させたい方
✔ インサイドセールスを内製化して、効果的な営業活動をしたい方
✔ インサイドセールスの運用方法を知りたい方
インサイドセールス内製化の需要が高まる理由
インサイドセールスを内製化する企業が増加する背景には、以下の3つの理由があります。
働き方改革による柔軟な営業スタイルの必要性
2019年に施行された「働き方改革」は、生産人口の減少や働き方ニーズの多様化といった社会課題を解決するための政策です。
この取り組みは、柔軟な働き方を推進し、従業員がそれぞれの事情に応じた環境で働けることを目指しています。営業職においても、こうした多様な働き方を支援する手段としてインサイドセールスが注目されました。
オフィスやテレワークで業務を完結できるこのスタイルは、育児や介護などで出社が難しい人でも働きやすい環境を提供します。
信頼を重視する顧客ニーズへの対応
HubSpot Japan株式会社が公表した第4回「日本の営業に関する意識・実態調査2023」によると、買い手の購買意思決定で最も重要な要素は「信頼できる企業であること」と報告されています。
また同調査の「企業に対する信頼に繋がる要素」のアンケート結果では、以下のような回答が挙げられました。
1位 営業担当者が自社の要望を的確に実行してくれる(59.4%)
出典:https://www.hubspot.jp/company-news/stateofsales-20230215?uuid=0d59abbd-690c-41b4-88c2-605e92b3fd56
2位 営業担当者が自社のことを真剣に考えてくれていると思う(53.6%)
3位 企業として言っていることと実際の行動が一致している(52.4%)
このことから、営業担当者とのコミュニケーションが企業への信頼形成において大きな役割を果たすことが分かります。
近年では、アポイント獲得を目的とした数重視の営業手法ではなく、顧客視点に立った提案力が求められているのです。
顧客の課題をヒアリングし、それに基づいた提案を行うインサイドセールスは、こうした顧客ニーズに対応する効果的な営業手法と言えるでしょう。
人出不足への対策
日本では、人出不足が深刻化しており、効率的な営業活動の需要がますます高まっています。限られた人員で最大限の成果を出すためには、生産性を向上させる対策が不可欠です。
従来の訪問型営業は移動時間やコストがかかる一方で、オンラインツールを活用するインサイドセールスはこれらの負担を解消できます。
インサイドセールスでは、移動時間を削減しつつ、顧客の進捗状況を一覧で管理することが可能です。また、顧客の温度感に合わせて最適な提案を迅速に行うことができ、結果的に営業活動の効率化が実現します。
限られた人員でも高い成果を上げられる仕組み作りに寄与する点が、インサイドセールスの大きな魅力です。
関連記事:【インサイドセールス】内製と外注どっちがいいの?メリット・デメリットを徹底比較
インサイドセールスの内製化を成功させる8つのステップ
インサイドセールスを内製化するための8つの手順を解説します。この工程を順に進めることで、組織の基盤を固めることができます。
①目的の明確化
まずは、インサイドセールスを構築する「目的」を明確にします。この工程は、組織全体の方向性を統一する重要な指標です。目的が曖昧だと、適切な戦略を立てられず運営が停滞する原因になります。
【手順】
①営業課題を洗い出す
②インサイドセールスで解決したい課題を整理する
【構築目的の例】
営業課題:新規顧客の獲得に苦戦している
解決策:見込み顧客の育成を通じて、長期的な成果を創出する
②商材の選定
目的を明確にした後は、取り扱う商材を選定します。立ち上げ時に複数の案件を抱えると現場が混乱しやすいため、自社の強みを活かせる商材を優先しましょう。
また、競合他社との差別化を図るため市場や競合分析も行います。
【商材選定の例】
自社の強み:豊富なITノウハウ
ターゲット商材:SaaS、HR、クラウドサービス
③営業手法の決定
商材に基づき、インサイドセールスで採用する営業手法を決めます。
【目的別の営業手法】
BDR(アウトバウンド営業):新規顧客への開拓型アプローチ
SDR(インバウンド営業):資料請求や問い合わせなどの反響型アプローチ
適切な営業手法を選ぶことで、効率的な営業活動が可能になります。
関連記事:【インサイドセールス用語集vol.1】BDRとSDRとは?2つの違いや役割を徹底解説!
④分業体制の確立
次に、インサイドセールスの業務範囲と他部門との役割分担を明確にします。
【一般的な分業例】
マーケティング部門:リードの発掘、リードジェネレーション
インサイドセールス部門:リードナーチャリング、案件化
リードの管理や引き継ぎ方法をマニュアル化し、運用する前に組織全体に共有しておくと効率的です。
【確認すべきポイント】
・インサイドセールスとマーケティングの役割分担
・リードの引き継ぎ手順
・リード管理体制
⑤シナリオ設計
営業活動の基盤となるトークスクリプトを設計します。顧客に伝えたい情報と提供するタイミングを整理し、顧客ニーズに応じたシナリオを作成します。
【伝えたい情報の例】
・キャンペーン情報
・無料トライアルの案内
・導入事例の紹介
・ウェビナーの告知
トークスクリプトは、顧客の温度感に合わせて複数のパターンを準備しておくことがポイントです。序盤では、簡潔に興味を引く情報を提供し関心度が高まった段階で詳細を説明します。
関連記事:営業トークスクリプトの作り方!テレアポの質を高める運用方法を事例で解説
⑥KPIの設定
KPI(重要業績評価指標)を設定し、営業活動の成果を数値化します。これにより、進捗状況が可視化され、課題の発見や改善がしやすくなります。
【KPIの例】
1日の営業目標
架電数:50件
アポイント取得率:20%
商談数:2件
成約数:1件
メール送付数:30件
設定したKPIは、定期的に分析し、改善点を見つける材料として活用しましょう。
関連記事:インサイドセールスのKPIとは?適切な設定方法と運用の具体例を解説!
⑦ツールの選定・導入
次に、インサイドセールスで使用するツールの選定です。顧客情報を一元管理できるツールは、効率的な営業活動の鍵となります。
導入する際は、自社の商材や営業規模に必要な機能が備わっているかを確認することが大切です。
【必要なツールの例】
SFAツール:営業支援システム
CRMツール:顧客管理システム
CTIツール:電話営業を効率化するツール
MAツール:マーケティングオートメーション
蓄積したデータや音源は、トークスクリプトやマニュアルに反映し業務全体の質を向上させましょう。
関連記事:営業組織にデジタルツールが必須な”理由”とツールのご紹介
⑧人材の確保と育成
最後は、適切な人材の確保と育成です。インサイドセールスは、メールや電話を用いた非対面型の営業活動であり、以下のスキルが求められます。
【必要な人材のスキル】
・PCスキル(メール、ビデオ通話など)
・コミュニケーション能力
・継続力や行動力
【管理者に求められるスキル】
・マネジメント経験
・数値分析力
・主体性
事前に研修を実施し、ツールの操作やトークの練習を通じて実践的なスキルを身につけさせることが重要です。
インサイドセールスの内製化を成功させるポイント
インサイドセールスを導入するだけでは、継続的な成果は期待できません。運用を成功させるには、営業活動の進捗を定期的に分析し、課題を改善し続けることが重要です。
ここでは、インサイドセールスの内製化を成功に導くポイントをご紹介します。
事例の共有
営業活動の振り返りを行う場を設けることは、成功事例の共有や課題解決に役立ちます。朝礼や夕礼、1on1ミーティングなど、定期的に活動内容を振り返る機会を取り入れましょう。
成功事例は積極的に活用し、課題はチーム全体で解決策を検討することで営業スキルを高めることができます。
【振り返りの事例】
課題
・担当者(決裁者)に繫がらない
対策
・担当者の在籍日を確認する
・リストの優先順位を設定する
・架電時間を確保する
・接続率の高い時間帯(コアタイム)に注力する
関連記事:【管理職必見】インサイドセールスを成功させるマネジメント手法6選!事例付き
マニュアル化
インサイドセールスで使用するツールの操作方法や成功事例をマニュアル化し、誰でも再現できる仕組みを作りましょう。
具体的には、営業フローやトークスクリプトを整備して新人教育の効率化を図ります。作成したマニュアルは、すぐに確認できるように格納場所を固定しておくと便利です。
【マニュアル化すべき内容】
・トークスクリプト
・オンラインツールの操作方法
・勤怠管理の手順
・営業フロー
【トークスクリプト作成時のフォーマットはこちら】
ロールプレイング・架電音源のフィードバック
新しい商材の営業や研修時には、ロールプレイングの実施が効果的です。他のメンバーからのフィードバックを受けることで、自分では気づかない改善点を発見できます。
また、架電音源をオンラインツールに保存し、チームメンバーがいつでも確認できる環境を整えましょう。経験豊富なコールマーケターの音源を共有することで、トークスキルの向上や人材育成に役立ちます。
アポイントの音源をマニュアルに反映させれば、組織全体の営業力向上にもつながります。
【ロールプレングの活用シーン】
・新人研修のプログラム
・新規商材の営業トレーニング
・商談前の練習
・トークスクリプトの改定
【ロールプレイングの評価シートはこちら】
外注の活用
インサイドセールスのノウハウやリソース不足を解消したい場合、外注を活用するのが成功への近道となります。代行会社を一時的または補完的に導入することで、効率的にスキルや運用体制を構築できます。
外注する際は、委託先と定期的な情報共有や進捗確認を行いながら内製化に向けた段階的な移行を目指しましょう。
【外注の導入例】
・導入時の業務フローの設計や立ち上げ支援の委託
・外注企業が持つ営業ノウハウやツールの導入支援の委託
・営業トレーニングやコーチングの委託
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【インサイドセールス代行会社の導入形態別の相場はこちら】
インサイドセールス内製化の成功事例
内製化のプロセスやポイントを解説してきました。最後に、インサイドセールスの導入に成功した企業の事例をご紹介します。
代行会社の活用で成果2倍!インサイドセールス導入の成功事例
飲食・物流業界を対象にデイワークサービスを提供する企業。自社で営業組織を保有しており他の外注施策も試みたが、顧客ニーズを捉えたアプローチができていないことに課題を感じていました。
そこで新たな試みとしてインサイドセールスを導入したところ、自社の営業組織の2倍~3倍の成果を実感。アポイント取得と商談の分業化に成功し、組織全体の業務効率が向上しました。
関連記事:【顧客事例①】求人アプリの営業支援で初月からアポ率7%を記録。
インサイドセールスの内製化で成果を最大化する方法
インサイドセールスは、顧客ニーズの変化や人材不足といった社内的背景から多くの企業で導入されている営業手法です。成功の秘訣は、目的の明確化や商材選定、人材育成といった各段階で適切な施策を実行することです。
また、事例共有やロールプレイングによるフィードバック体制を整えることで、組織全体のスキル向上と安定した成果の創出が可能になります。
インサイドセールスの導入や運用でお悩みの方は、ぜひこのステップを参考に自社に適した戦略を検討してみてください。
以下では、当社が提供するインサイドセールスの成功事例や運用ノウハウをまとめた無料資料をダウンロードいただけます。内製化に役立つ具体的なポイントを網羅した一冊となっておりますので、ぜひお役立てください。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
IS factory magazine編集部です。2022年開設。
定期的にインサイドセールスや営業に関するノウハウを発信しています。