昨今の営業市場では、複雑化した顧客ニーズへの対策やデジタル技術の導入に伴い、インサイドセールスの重要性が高まっています。
しかし、「インサイドセールスを構築したが成果が出ない」と運営に課題を感じている経営陣も少なくありません。効果的な組織をつくるには、適切な目標管理や人材育成を担うマネジメントが求められます。
そこで本記事では、インサイドセールスを成功させるマネジメント方法と事例をご紹介します。営業組織のパフォーマンスを最大化したいと考える管理職の方は、ぜひ参考にしてみてください。
こんな方におすすめ
✓ インサイドセールスの効果的なマネジメント方法を学びたい方
✓ チーム全体や個々のスキルを最大化したい管理職の方
✓ インサイドセールスのマネジメント事例を知りたい方
インサイドセールスでマネジメントが重視される背景
テレワークの普及により、営業活動の在り方は大きく変化しました。総務省「令和2年通信利用動向調査の結果」によると、企業におけるテレワーク導入率は令和元年から倍以上に上昇し、今後導入予定を含めると約6割に達しています。
このように、リモート環境での業務が一般化したことで、チームの進捗や成果を見える化し、個々の活動を的確にサポートするマネジメントの重要性が高まっています。
特に、インサイドセールスでは、非対面でも成果を出すためのプロセス設計・データ管理・メンバー育成が求められており、マネージャーの役割が組織の成果を左右する時代となっています。
インサイドセールスマネジメントとは
インサイドセールスマネジメントとは、非対面型の営業組織における目標達成のための計画・運用・人材管理を行うことを指します。ただ進捗を追うのではなく、以下の3つを総合的にマネジメントするのが特徴です。
・プロセス管理
KPI進捗、SFA(営業活動データ)の可視化
・人材マネジメント
評価制度、育成、モチベーション管理
・チームビルディング
役割分担、連携設計、会議運営
マネージャーは、成果をつくる環境を設計するリーダーであり、単なる監督者ではありません。
関連記事:インサイドセールスの内製化を成功に導く8つのステップ!今すぐできる運用戦略
成功に導くマネジメント手法6選(仕組み面)
インサイドセールスを効果的に管理するには、業務内容と実行する目的を理解する必要があります。まずは、マネジメントにおける管理者の役割を頭に入れておきましょう。

①明確なKPI設定で成果を可視化する
目的:
チーム全体で「どこを改善すべきか」を数値で把握するため
実践ステップ:
1.まずKGI(最終目標)を「月間受注件数」「商談化数」などで設定する
2.そこから逆算し、KPIを「架電数」「接続率」「アポ数」など3つ程度決める
3.ダッシュボード(例:Googleスプレッドシート、Salesforce/HubSpot/kintoneレポート)でリアルタイムに進捗を共有する
4.定例ミーティングで「達成率」「改善箇所」をチームメンバーと振り返る
KPIの例:
架電数:1人あたり40件/日
接続率:20%
アポ数:5件/月
ポイント
KPIは、全員が理解できる単位で設定します。数値だけではなく、「なぜこのKPIが重要なのか」を説明すると納得感を持ってメンバーが稼働することができます。
関連記事:インサイドセールスのKPIとは?適切な設定方法と運用の具体例を解説!
②SFA・CRMを活用してデータを一元管理する
目的:
属人化を防ぎ、チーム全員が同じ情報をもとに行動できるようにする
実践ステップ:
1.使用するツールを統一させる(例:Salesforce、HubSpot、スプレッドシートなど)
2.「担当者」「リードステータス」「最終接触日」「次回対応予定日」など、入力ルールを明確にする
3.入力を自動化して(例:通話ログ連携、メールトラッキング)して工数を削減する
4.週1回、活動データをもとにリードの進捗をレビューする
注意点:
重複リードはないか、引き継ぎ方法は統一されているかを確認する
ポイント
ツールを導入した後は、データの更新→分析→改善のサイクルを回すことが大切です。
③定例ミーティングで進捗と課題を共有する
目的:
チーム内の成功事例と課題を共有し、学びを全員が実行できるようにする
実践ステップ:
1.毎週15~30分の週次定例を設定する
2.議題(①成果報告②KPI振り返り③成功事例・失敗事例共有など)を決めて共有する
3.改善点と次週のアクションを整理し、チームで対策を実行する
課題と改善例:
担当者接続率が10%に低下した→つながりやすい時間帯や受付突破の事例を共有する
ポイント
会議の目的は、報告ではなく改善することにあります。全員が発言しやすい場をつくることでメンバーの主体性も高まります。
関連記事:【営業プロセスの見える化】属人化を防ぐ5つの手順!
④成果を正しく評価してモチベーションを高める
目的:
行動と成果の両面を評価し、チーム全体の士気を維持する
実践ステップ:
1.成果評価(KPI達成率)とプロセス評価(改善姿勢・提案数など)の2軸で設計する
2.月次で1on1ミーティングを実施し、目標・課題・今後のキャリアを共有する
3.小さな成功体験も可視化する(例:ベストトーク賞、リード情報獲得)
4.組織全体で称賛文化をつくり、成果をシェアする
称賛例:
社内表彰、社内チャットツールでの称賛投稿
ポイント
褒められる機会がある組織は離職率の低下につながります。評価する際は、定量+定性の両面に視点を向けましょう。
関連記事:アンガーマネジメントとは?怒りのタイプを理解して感情をコントロールしよう!
⑤育成計画をOJTとOFF-JTで設計する
目的:
メンバー個人の経験に頼らず、体系的にスキルを伸ばす
実践ステップ:
1.OJT(日々の架電後にトークレビューやロールプレング)を実施する
2.OFF-JT(月に1度の外部セミナーや社内研修)を組み込む
3.メンバーの課題ごとにトークスクリプトの改善、CRM運用、リードナーチャリング設計などの対策を設定する
4.評価面談で対策の効果と学びをセットで振り返る
研修例:
担当案件の業界や想定される断りに対するロールプレイング
ポイント
育成を日常業務の延長として取り入れます。対策後の変化を分析することで、今後の研修体制の強化にも直結します。
【トークスクリプトの設計テンプレートはこちら】

⑥部門間の連携を促進して商談機会を増やす
目的:
インサイドセールス・マーケティング・営業部門と連携して成果を出す
実践ステップ:
1.マーケティングから引き継ぐリードの基準を定義する
2.営業(フィールドセールス)と商談化する条件を擦り合わせる
3.月次で「引き渡しリードの商談化率」や「顧客動向」を共有する
4.定例会で「どのリードが刺さったか」を振り返り、改善サイクルを回す
リード基準の例:
業界、導入意欲・時期、規模、予算
ポイント
リードの質を改善するには、部門間の成果基準の統一から始めます。各部門で使う専門用語や業務フローを理解し、それぞれの役割を明確にすることが大切です。
【インサイドセールス用語の習得に役立つ理解度テストはこちら】

関連記事:【インサイドセールス】内製と外注どっちがいいの?メリット・デメリットを徹底比較
管理職に求められる3つのスキル(人材面)

インサイドセールスのマネージャーには、チーム全体を俯瞰しながら個人の成長を支援する力が求められます。成果が出る仕組みを、メンバーを通して機能させるスキルが必要です。特に重要なのは、次の3つです。
①データ分析力:数値の背後にある原因を見抜く力
インサイドセールスは、データドブリンな組織運営が基本です。数値を集計するだけではなく、数値の変化の理由を説明できる能力が求められます。
具体的な業務
・KPIごとに行動指標を紐づける(例:アポ率低下→架電リストの精度orトーク構成の問題)
・SFAツールやダッシュボードを活用し、個人別・期間別・属性別に分析する
・定例会議で数値結果の意味をメンバーと共有し、改善策を共創する
ポイント
数値の良し悪しではなく、「なぜそうなったのか」を言語化することで、メンバーも自発的に改善策を考えるようになります。
②コミュニケーション力:リモート環境でも信頼関係を築く力
非対面でのやりとりが中心となるインサイドセールスでは、情報の粒度と透明性が信頼関係に影響します。マネージャーは、「話しかけやすい・相談しやすい」雰囲気をつくることが大切です。
具体的な業務
・毎朝5~10分のオンライン朝礼で連絡事項や事例を共有する
・社内チャットツールでの声かけを意識する(例:昨日の商談良い切り返しでした!)
・週1回の1on1で、成果だけではなく「不安・課題・挑戦したいこと」を確認する
ビデオ通話のカメラオン文化やリアクションスタンプなど、非言語コミュニケーションの工夫を取り入れる
ポイント
オンライン環境では、意図的にコミュニケーションの場をつくることが信頼構築の鍵です。マネージャー自身が発信頻度を高めることで心理的安全性が生まれます。
関連記事:【シート公開】効果的な1on1の進め方って‥?メリットや取り組み事例を解説!
③コーチング力:メンバーの成長を促す対話力
メンバーが自分で課題を発見し、行動できる状態をつくるのがマネジメントの理想です。そのためには、「指示」ではなく「質問」で導くコーチング型マネジメントが有効です。
具体的な業務
・1on1で「どうすれば良かったと思う?」「次はどうしたい?」などの質問を意識する
・成果を褒める際は「どの工夫が良かったのか」を具体的に伝える
・失敗時は「責任の追及」ではなく再発防止の体制づくりに焦点を当てる
・定期的にキャリア面談を実施し、長期的な成長ビジョンを共有する
ポイント
コーチングは、聞く力が必要です。沈黙を恐れず、メンバーが自分の言葉で発言できる時間をつくることが大切です。
これら3つのスキルを磨くことで、「データで語れる」「信頼で支える」「対話で伸ばす」といったマネジメント術が身につきます。チームが自律的に動けるようになれば、マネージャーの役割は指揮官から支援者へと進化します。
インサイドセールスのマネジメントを行うポイント
次に、インサイドセールスをマネジメントする際のポイントをご紹介します。部下との信頼関係を構築する大事な取り組みなので、抑えておきましょう。
部下を信じて任せる
部下の成長や信頼関係を構築するには、信じて任せることが大切です。営業実績が豊富な管理者は、部下に業務をやってもらうよりも自分で処理をする方が早いと考える傾向があります。
しかし、管理者が部下の仕事をこなしてしまうと「信頼されていない」と、意欲をなくしてしまいます。営業担当者のモチベーションを高めるためにも、部下を信じて任せてみましょう。
ただし、部下に任せる=放置することではありません。部下の進捗状況を確認し、必要であればサポートに入りましょう。部下が業務をこなした達成感は、自信に繋がります。
関連記事:【今さら聞けない!】”コーチング”と”ティーチング”のマネジメント手法とは
自身の弱みを知る
管理者は、部下だけでなく自身のスキルを分析して弱みを知る必要があります。自身の弱みを理解することで、部下の立場で物事が考えられるようになり、信頼関係を構築しやすくなるのです。
また、管理者がチームに弱みを共有すると営業担当者の心理的安全性も確保されます。苦手な部分を打ち明けられる環境は、適材適所の人材配置にも役立つでしょう。
自身を分析するには、チームの業績や他者からのフィードバック、自己評価ツール(サーベイ)を活用します。改善点は修正する意識も大切ですが、得意なメンバーに頼ることでチームの結束力が高まるでしょう。
自分一人で管理しようとしない
インサイドセールスのマネジメントは、各部門の管理者や営業担当者と連携を取りながら最適な運用方法を確立していきます。管理者が一人でマネジメントをしようとすると、属人化してしまい効果的な営業活動はできません。
連携を強化するために、積極的に意見交換の場を設けて組織の課題と向き合っていきましょう。他部門や外部の代行会社から得た施策は、チームの戦略に活かして組織全体のパフォーマンスを向上させます。
マネジメントで陥りがちな失敗と注意点
マネジメントをしていく中で、多くの組織がつまずくポイントがあります。特に、以下の3点には注意が必要です。
①成果主義に偏り過ぎている
短期的な成果だけを追うと、メンバーは数字を上げるためだけの行動に走り、改善サイクルが止まります。インサイドセールスの役割は、商談創出だけではなく顧客ニーズの分析や関係構築にもあります。
改善策
・改善するための行動やチームへの貢献度なども評価指標に追加する
・数値が低迷している時期でも良い取組みを全員で称賛する
・定例会議では「成果報告」と同じ比率で「学びや課題の共有」の時間を設ける
意識すべきなのは、結果よりも再現性です。成果が出る行動をどうマニュアル化していくかが、マネジメントに問われます。
②ツールの導入だけで満足する
SFAやCRMを導入しただけで運用の改善が出来ていないケースも少なくありません。ツールは、マネジメントを効率的に行うための手段です。
改善策
・「誰が」「いつ」「どの情報を」「どう使うか」を明文化する
・データ入力を自動化し、メンバーの工数を最小限に抑える
・毎週1回、ツール上の情報をもとに成功、改善点を共有する
ツールの導入後は、3ヶ月間を目途にチームで使いやすいよう仕様を整えましょう。ここで、習慣化しなければツールは使われなくなる可能性があります。
③1on1が形式的になる
1on1が週次報告会になってしまうと、メンバーは本音を打ち明けにくくなります。目的は、業務報告ではなく成長支援にあります。
改善策
・毎回テーマを設定する(例:今週の気づき、挑戦したい案件など)
・1on1の内容をメモに残し、次回に前回の内容を振り返る
・仕事以外の話しも3割入れると、信頼関係が深まりやすい
1on1は、聞く場と考える場のバランスが大事です。指導ではなく、対話を意識しましょう。
マネジメントは、メンバー一人ひとりの成長を支える姿勢が、組織を持続的に強くします。最終的には、自走するチームをつくることがマネージャーの最大の成果です。
成功事例:IS factoryのマネジメント実践例

インサイドセールスのアウトソーシング事業を展開する当社では、架電数や接続率などのKPIをリアルタイムで開示し、「稼働データの可視化×振り返りサイクル」を定着させました。
この章では、具体的な実践事例を3つご紹介します。
①接続率を11.7%→20.9%に改善した「アプローチ設計の見直し」
人材派遣事業の営業支援では、架電を行っても不出や受付止まりで終わるケースが多く、担当者接続率が11.7%と低迷していました。
そこで、マネージャー主導でアプローチタイミングの最適化をテーマに改善プロジェクトを実施。まず、担当者の在社時間帯をヒアリングし、専用ツール上にデータを蓄積。次に、アプローチ日程を時間帯別に一覧化し、最適な架電タイミングをチーム全体で共有しました。
その結果、アプローチの精度が向上し、担当者接続率は20.9%まで改善。同時に架電先の優先順位が明確になり、アプローチリストの選定にかかる工数の削減にも貢献しました。
②新入社員が初月から即戦力化した「ロープレマラソン研修」
IS factoryでは、インサイドセールスの実践力を短期間で高めるために、「ロープレマラソン研修」を実施しています。
この研修は、実際の案件を想定した架電のロールプレイングを連続して行うもので、チーム内の営業経験者と新入社員がペアを組み、現場に近い臨場感の中でトークスキルを磨けるのが特徴です。
ロープレを通して、単なるスクリプトの読み合わせではなく「間の取り方」「トーン」「相づちのタイミング」など、実践でしか身につかない対話の感覚を学ぶことができます。
研修後は、評価シートをもとにしたフィードバックを実施。アドバイスの内容を標準化し、フィードバックの質を担保しています。また、メンバー間の交流促進にもつながり、心理的安全性の確保にも寄与しています。
結果として、新入社員でも初月から即戦力として商談創出に貢献できる体制を構築することができました。
【ロープレの評価シートはこちら】

③リモート環境でも一体感を生む「称賛と共有のマネジメント」
リモートワークが中心のインサイドセールス組織では、部門間の連携が希薄になりやすく、成果の共有や称賛の機会が限られるという課題がありました。
そこで、成果を見える化し、称賛を習慣化する仕組みを導入しました。具体的には、社内チャットツール上で日々の成果報告を行い、他メンバーがスタンプやコメントで反応・称賛できる環境を整備。
また、組織全体のキックオフミーティングを定期的に開催し、部門を超えて成功事例を共有する場を設けています。
こうした取組みにより、「〇〇さん、すごいアポ取ってますね!」といった自然な称賛の声が生まれ、メンバー同士が互いの功績を認め合う文化が定着。
他部門の取組みや事例を自チームに応用する動きも広がり、組織全体の改善サイクルが加速しました。結果として、リモート環境下でも高い一体感と連携力を維持できる組織体制が構築されました。
関連記事:【キックオフミーティング】開催目的と進め方は?事例付で解説!
管理体制を構築してインサイドセールスのマネジメントを成功させよう
今回は、インサイドセールスを成功させるマネジメント方法と事例を解説してきました。

インサイドセールスのマネジメントでは目標を明確に設定し、成果分析と改善をくり返すことが大切です。適切な管理体制を構築して、組織のパフォーマンスの最大化を目指しましょう。
関連記事:営業戦略の立て方完全ガイド:競争に勝つための具体的ステップとフレームワーク
弊社では、企業の課題や商材に合わせたインサイドセールスチームの構築を支援しております。管理体制の構築に必要なノウハウや人材などのリソース不足にお悩みの方はお気軽にご相談ください。

IS factory magazine(アイエス ファクトリーマガジン)編集部です。2022年開設。
定期的にインサイドセールスや営業に関するノウハウ、セミナー情報を発信しています。
